緩・閑話 ローズ
「や♪なにしてんの♪」
「綺麗だなーって見ていたの」
王宮の庭には綺麗な自慢の薔薇園がある。白い薔薇、桃色の薔薇、オレンジ、黄色、コーナー別にわけてあり、季節によって区画を愛でられるよう造られている。ミチルは一人でこのコーナーを訪れるのが好きだった。自由に街中を散策はできないが、朝、一人で大きな庭を散歩はできる。夜明けごろ、こっそりとミルクをあたためて朝日を浴びるのも楽しみの一つだった。
宇宙が白みだし、朝日が昇り、世界が輝きだす。街が徐々に夜明けを迎える姿を見下ろせるのは城住まいならではだ。日本にいたときでは経験できなかった楽しみ。不満より感謝があふれる瞬間だ。
「朝陽よりミチルの方が綺麗だけどね♪」
「……そーゆーあからさまなお世辞は嫌い」
「う゛」
ローズはどこうとせず、ミチルの横に座る。
「ベルクは一緒じゃないの」
「別にいつも一緒ってわけじゃないもの」
「へぇ?一緒に寝てるのに?一人で先に起きてる方がヤらしくない?」
「はぁ!?ちょ、べつにそーゆーことしてないし!一緒に寝てるだけだし!」
「え?ジーマーで?」
「!?」
カマをかけられたことに気がつき、ローズの爪先にかかと落としが食らわされた。
「☆★@!?@★☆」
「さいってー!!」
「で?なんでここ?」
「あ、ごめん、あたし、邪魔してた?」
ここはバラ園というからには、ローズにとって特別だったかもしれない。
立ち上がろうとしたミチルの手を握りとめた無言の圧に、座り直す。
「別に。いいよ」
「ありがとう。あたしね、ここが大好きなの」
「?」
「ここにあるバラってあたしが住んでた近所のお家にも咲いていたのね?ピンクの薔薇がいつもきれいで。そこのお家の人が優しくって、そこのワンちゃんも可愛くってさ?」
「へぇ」
「ここに来るたびに思い出してたんだ。モモってなんかローズに似てるんだよねぇ?」
「は?俺が?犬に?」
(一応)俺、この国の王子様なんですけど!?ワンちゃん扱い!?
「うん。そのモモは犬なのに人見知りが激しくって。変わってるでしょ?」
「そーゆーのは気高いって言うんだよ。媚びぬ存ぜぬだ。誇り高い」
「あぁ、そうかも。きっとそれ。飼い主にはすっごいデレデレなのに、知らない人には尻尾をふらなくって。撫でさせもしないんだから!」
「悪くないな」
「ね?ローズそっくりでしょ?」
「なにいってんの?俺は尻尾降って媚び売ってるけど?」
「それは第二王子としての努力(生き方)でしょ」
「で?そのモモはミチルにも冷たかったの?」
「ううん?あたしのことは好いてくれてたから♪あたし犬にはモテるからさ♪」
「あ、そ」
「郵便局員さんにも吠えるのに、あたしのこと好きでいてくれたんだよ?犬飼ってると犬に好かれやすくなるってあるんだけどね?モモがデレるのはちょっと嬉しかったよねぇ♡」
「あ、そ。誇り高き犬もキミに陥落したんだ?」
「うん。だからローズとどうやったら仲良くできるかな?って考えるときはここに来てた」
「は?なんで?俺たち仲よしじゃない?」
「そう?ローズはあたしのこと好きじゃないでしょ」
「は?なんで!?」
「ベルクをとられて寂しがってる」
「いやいや。俺たち男兄弟よ?そーゆーオンナノコの理想とか、ナイナイ♪」
まいったまいった。オンナノコはこれだから。男に夢見ちゃうんだから。
「そう?じゃあ寂しくなったら呼んで?あたしでよければ一緒に居るから」
「……なにいってんの?」
ミチルは立ち上がって城に向かったが、ローズはそのまま朝日を浴びていた。
さみしかったら呼んで
あんなふうに見透かしてくる女は初めてだ!気分が悪い!それに犬と一緒にされるなんて!なんてぶしつけな女ーー。ピンク色の薔薇を睨んでいたローズが突然笑いだした!
「あはは!」
まいったな。
「誰がモモだって?」
もう、きみに会いたくなってる。
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