あたしが捕食側って気づいてる?
「ねぇベルク!」
「どうしたの?」
「今日ね?新しくクラスの何人かと喋れたの!マロン以外で!」
「へぇ!それはよかった!」
帰り路、二人きりになれたこともあって、思い切って今日の事件を話してみた。差別と暴言はなかなか辛かったけれど、ミチルとしてはそれ以上にクラスやグループの子と会話ができるようになったことが嬉しいと笑報告する。
「そう。大変だったね」
「んー、でもあたし落ち込んでもいないし!むしろ感謝してるし!」
「そうなの?」
「だってベルクも王様も、この家のみんなはあたしに親切で優しすぎるから。グリンの差別のおかげで現実も見れたでしょ?良い経験ができたって心から思えてる」
「……ミチルは強いね」
「強くなれたの!あたしが強くなれたのはベルクのおかげだよ?ベルクがいつもあたしに優しくしてくれるから。いつも生きてていいって言ってくれたから!だからだよ!?本当にありがとう♡」
「僕は誰よりもミチルを必要としているから」
「うん♡」
「いや、あの……僕はミチルを必要だし、必要とされたいんだ!その、今だけじゃなくて!あの、その、ずっと!ずっと一緒にいたいって意味で……!!」
「ありがとう♡あたしもベルクとずっと仲良くしていきたいよ!」
「……」
(まぁいいか)
すれ違いははちみつ色の宙に溶けてしまって。馬車はガタガタと何事も無かったようにゆっくりと走る。眠ってしまいそうなほどゆらゆらの日差しに包まれていた時!つんのめるほどの急ブレーキが二人を起こした!
「うわぁ!」
「きゃあ!」
「申し訳ありません!先ほど、なにか動物がーー!」
「誰にも怪我がなくてよかったよ」
こんなときにも振る舞われる彼の残酷な優しさが切な苦しい。
(みんなを肯定するのが 王子様の仕事だもんね)
「ミチル?大丈夫だった?」
「ううん。ちょっとこわかった。あの……だから……そばにいてくれる?」
「……うん」
ベルクに腰元から抱き寄せられると、溶けるように心臓の音が重なる。
ドキドキしているのは誰だろう?
ドクンドクンという音は誰のものだろう?
頬が熱い。もっと聞きたい、とミチルが彼の心臓に体重を預けると、互いの右手がゆっくりとツタのように絡まり合う。はぁ、と甘やかな彼の吐息が耳から全身を犯し、もっと触れたいとミチルが身体をひねって近づけば、さらに抱き寄せられた。
馬車の中でよかった。手を繋いでいるのが誰にも知られなくて済むから。
帰り路でよかった。頬が赤いのを夕陽のせいにできるから。
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