脳は省エネ好きだから 挑戦しない理由探しをするんだよ



「聞いたぞ、ミチル。大した手柄だったそうだな」

「学校から『名誉勲章を渡したい』だってさ♪」

「過度な謙遜はかえって嫌味ですよ。賞賛は素直に受け取ってはいかがです」

「だからなにが!!!」

 夕餉の前に王子達がドヤドヤとミチルの部屋にやってきた。(もう、すでに嫌な予感がする)

「学校で生徒を助けたんだって?」

「助けたのではなく、倒れてる人をラクにさせただけです!医療行為じゃありません!応急処置です。大したことなんてなにもしてません!」

「中等部には死者を蘇生させたと伝わってきましたけど?」

「はぁ!?」

「まぁ、いーんじゃない♪?ハクがついて♪」

「よくなーーーい!!」

「すごいね!ミチル!」

 みんなの言うミチルはあたしじゃない。……あたしはそんな立派じゃない。

「……ごめん。みんなが悪いわけじゃないの。でも、ちょっと一人にさせて」

 ?マークが頭に浮かんだまま、彼らを部屋から追い出して、窓越しの夕闇色に浮かぶ白月を見上げる。こんなときサクヤがいたら。相談出来たら。

 有り得ない「たら」「れば」は卒業するつもりだったのに、情けない。

 それでもいい。目の前にあのなんでもズバズバ言ってくれる親友が居たら?なんて言うだろう?

「王子たちが何をどう言おうが、ミチルが今の生活を拒否する要素はどこにもないだろう」とか?

 一番「らしい」答えに笑うと、少し気が晴れた。


 獣医になったハム太のことうらやましいって思ってたらこの世界で人生やり直せるチャンスもらえちゃった。

 獣医になれるチャンスまでもらえちゃった。

 美女と野獣が大好きだったら、獣人ハーレムのお姫様ポジションになれちゃった。

 信じられないほどラッキーなハズなのに、なんであたしは泣いてるんだろう?



 大切にしてくれている皆を追い出して、一人ぼっちでこの部屋で泣いて……。

 なんで人生やり直せてないんだろう?


 悪いのはベルクじゃない。この家の王子達じゃない。

 自分で自分を肯定できない自分が大嫌いだ。

 期待に応えられない、期待しないでくれ、どうせ失敗するから!って最初からあきらめようとしてる。   

 失敗していい理由を、挑戦しない理由探しをしてしまう。


 自分で自分を否定して 幸せになる努力から逃げて

 生まれ変わったのに、環境が変わったのに、あたしが変わってない。

 こんなの神様がくれた切符(チャンス)の無駄遣いじゃん。


 この世界に「あんたに獣医は無理」なんて言うひとはもういないのに

 この世界ではみんなが応援してくれてるのに


 あたしはいつまで逃げるの!?

 今度は誰のせいにするの!?


 もう逃げたくない!

 あたし 強くなりたい!強くなるの!

 

 ここでがんばるって 神様に約束したんだから!!

 ここでがんばらなきゃ!あたしこそ☆☆☆☆☆(サイテー)だ!


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