ガーゴイルな天使

「起きたと聞いたぞ!本当か?」

「ジーマーで♪!?♪」

「入りますよ!!」

餌付けの最中などおかまいなし!どやどやとベルクには似ていない毛色の違う三匹が現れた!!

「起きたのは本当だし、はいだし、三人ともとっくに部屋に入ってきてるじゃないか」

 ナプキンで手を拭くと、ミチルを隠すように紫色の服が立ちはだかった。こっそりと向こうをのぞくと、黒髪のツンツン頭、赤桃色の腰までのロングヘアの背の高い二人がいる。肩までの金髪を後ろでまとめている薄青色の瞳の少年はベルクより頭ひとつ小さい。

(例のお兄さん?)

 会話は聞いていないフリをしていたのが、ツンツン頭がベルクの向こう側から覗き込んできた。

「おい、人間。生きてるか」

「兄さん!」

「喋るのは構わないだろう」

「言い方があるでしょう!人間なんて言い方。怖がらせてどうするんです!」

 への字形に唇を尖らせるベルクを横に、赤桃色の男性がするりと滑り込み、ミチルに目線を合わせた。

「おっはよ★千年オトメさん♪」

真紅の瞳を重ねながら手の甲にちゅ、と音をたてて、そのままミチルのあごがくい、と持ち上げられた。ミチルの頬が真っ赤に沸騰したのを見て、彼はにやりと意地悪そうに口角をあげる。

(わーん!やられた!だってカッコいい!!!)

「ローズ!!」

 悪びれもせず、あははと楽しそう。

(性格悪ッ!あぁ、でも見た目がいいから許すぅ!!)

「オトメの目が覚めたなら父上と母上のもとへ参りませんか。まだ起き抜けでしょうから今すぐとは言いませんが。急いだほうが良いかと思いますよ」

 入り口で立っていた金髪の少年が口を開いた。

 (弟くん?すごい綺麗!天使みたい!)

「それは……そうなんだけど……」

「なんです」

「その……ミチルを驚かせないかと」

「吾らが王君が恥とでも?」

 (は!?)

「ちょ、ちょっと待って?」

「?」

「今、王、って聞こえたけど」

「ええ。我々の父はこの国の王ですが?」

「え?じゃあここお城?ベルクは、みんなは王子様ってこと?」

「うん、そうだよ」

「あなたまだそんなことも言ってなかったんですか!?」

 天使はガーゴイルに変身し、兄を睨んでいる。

「そんなことより大切なことだってあるだろ!!彼女はこの国にきたばかりなんだよ!?ルーンは頭もいいし合理的で立派だ!でも感情ってものがわかってない!」

「兄さんこそ伝えるべきことを伝えてもいないまま人間族を懐柔しようとしているじゃありませんか!」

「そうじゃない!だけど『オトメは別の世界からやってくる』んだろ?まだ何も知らないのにこの国を嫌いになったらそれこそ――」

「この国に住んでいたら嫌でも目にするんです。逃げても解決いたしませんよ」

「ルーンは僕に対して厳しくない?」

「現状を述べているだけです」

「しっかりものの弟で嬉しいよ」

「兄さんたちのおかげですね」

 (どちらが兄でどちらが弟だか)

 クスクスと笑うミチルを見て「ほら」とルーンが肩をすくめている。

「すごく仲がいいのね」

「そうかな?」

「うらやましい。私、キョウダイがいなかったから」

「そうなんだ」

「他人のネガティブ発言がそんなにうれしいんですか。性格が悪い」

「違う!ミチルのことを新たに知れた喜びだ!!」

 顔を真っ赤に染めながら、ベシン、ベシン、とフワフワの尾が勢い良く地面を叩いている。

「はぁ?」

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