第7話 はじめまして お嫁さん⑤
「
ほっとしたように、力なく笑みを浮かべた
「やや、これは義姉上殿!! 気がつかれたとは
割り込んできた吉野の顔に、思いっきり邪魔された。
「……」
「いたっ!? 痛い痛い、嫁御殿、それは拙者の顔であいたたたた……!!」
腹を立てた
「ひ、
かわいそうだよと優しく制止する
「姉様と私の邪魔をした吉野が悪いのではないかね?」
お互いに無事を確かめあいたいあの場面で邪魔をされるなど、
「何と! 嫁御殿は拙者を仲間外れにするというのか? 拙者、もう嫁御殿の家族になったと申すのに!?」
衝撃を受けたというようすで吉野が
「否定したくなるのはなぜなのだろうね?」
「そんな?! 嫁御殿はもう拙者の妻であろう?!」
腕組みをしてそっぽをむく
顔のあたりに手を上げ、おろおろと二人を見比べていた
「えっと、ところで吉野さんは何の神様なの? 見た目は武神かな?」
高く結いあげた黒髪と腰にさした刀でそう見えるのだろうか。そういえば、先ほども襲撃者に対して刀をむけていた。
小首をかしげる
「いや、それがじつは思い出せぬのだ。正直なところ、嫁御殿に会うまで自分が何をしていたのか拙者も何も覚えておらぬ。」
「記憶がないの?」
驚いたような
(神が記憶喪失とは、ね。聞いたこともないが……とはいえ全く可能性がないわけでもない。)
ひとつめ、生まれたての新しい神で自我が目覚めたばかりというもの。
ふたつめ、何か罪を犯してその代償に記憶を奪われたというもの。
「うむ。だが嫁御殿に呼ばれてここに来たことを考えると、拙者と嫁御殿はそれ以前から何やら縁があったのやもしれぬな。」
うんうん、とどこか誇らしげに頷く吉野に、何故か
「これから一緒にがんばろうね、吉野さん!」
人形のように愛らしいと評される顔立ちに満面の笑みを浮かべて、
「うむ、共に
互いにかたく手を握り、繋いだ手をぶんぶんと振り回しながら頷きあう。
何やらわかりあっているふたりに声をかけようと
「
叫び声を合図にするように、それまで倒れていた人びとの姿がゆらゆらと
後に残ったのは、広々とした他に人のいなくなった社と、
「はあっ、はぁっ……! ごぶ、ご無事ですのおふたりとも?!
ーー暴れ馬もかくやという勢いで、髪を振り乱しながら走ってくる残念きわまりない美少女の姿だった。
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