第3話 はじめまして お嫁さん①
すっかり遅くなってしまった。
名残惜しそうな兄弟と別れ、社へと
(今日の姉様のようすは変だったから、早く帰りたかったのだがね。)
思い出すのは、双子の姉である
『おや、どうかしたかね? 姉様。』
そのくせ、
『……う、ううん。何でもないの。……行ってらっしゃい、
だから今日は早く帰って
任務の帰りに、【亡者】に襲われた兄弟を見つけるなど、運がいいのか悪いのか。
「……姉様、」
結界を抜け、社へとたどり着いた
(静かすぎる……?)
「誰か、いないのかね?」
声をあげ、辺りを見回す。だが、返ってくる声はひとつもない。いったい、何があったのか。
ガサッという音と共に、茂みが揺れる。
「姉、様……」
顔を輝かせた
「ほう? この社の者は皆殺しにしたはずだったが、まだ生者がいたとは。」
茂みを揺らしてその場に現れたのは、見知らぬ男だ。だが里の者ではない。身にまとう着物が明らかに違う。男の着物はあまりにも高級で、だからこそすぐにわかる。
整ってはいるものの性格の悪さが
「誰だね? 皆殺し?
社に住まう者は、
「私の言ったことが正しいかどうかは、すぐにわかる。……ふふ、君の泣き顔が今から楽しみだよ。」
最後に付け加えられた言葉だけ、うっとりとした声音で告げられたことに
この上なく気持ちの悪い男だ。鋭く舌打ちして、
「これ、は……」
男の予言通り、社には【亡者】に襲われたのだろう、体の一部を食いちぎられた遺体があった。
「これを貴様がやったのかね?」
後ろからついてくる男に殺意をこめて
「そうだと言ったら?」
面白いおもちゃを見つけたといわんばかりに、男の紅い唇が弧を描く。
「知れたことではないか!」
こちらに伸びてきた男の手がふれる前に、
「代償を、」
「残念だ、遅い。」
ニヤリと笑った男の手が伸び、
「……くっ、ぅ」
転げ落ちたのは社へとつづく回廊からだったのに、まるで山頂から叩き落とされたかのような痛みと衝撃。
ありえない速度で詰められた間合い。人間離れした
(この男、人間ではないというのかね……?)
見た目は人間だ。だが、能力が比べ物にならない。歴代の姫宮家のなかで最高の神通力をもつ
(舞う暇などない。ならば、捧げることができる代償はひとつ。)
きつく唇を噛みしめ、
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