草木は眠らぬ丑三つ時

タカハシU太

草木は眠らぬ丑三つ時

 奴らは秘かに叛乱を起こし始めていた。


 忽然と行方不明になる事件が相次いだ。それも日本各地。いや、世界中でも同じようなことが起きていたのかもしれない。ただ、私たちが気づかなかっただけだ。共通点が何ひとつなかったのだから。

 街中の防犯カメラの記録には、A地点を通過していた人物が、その先にあるB地点には現れなかった。C地点からD地点の間でも……。そんな事例が関連性のないあちらこちらの場所から報告されたので、その中間で拉致でもされたのではと、各地の警察は捜査した。

 行方不明者の持ち物が落ちていたこともあった。時には血痕が発見された。悲鳴を聞いたという証言者もいた。けれども犯人は分からずじまいだった。そもそも、日本の北と南で同じ深夜帯に発生しているのだ。

 これは偶然なのか。

 結局、誰にも気づかれないまま、ことが始まり、終わるのだろう。犯人が何者か分かるのは、被害者だけ。最期の光景が目に焼きつく瞬間。


 そして私もまた、そのひとりとなった。

 終電で駅を降り、ほろ酔い気分で帰宅する途中のことだった。住宅街を抜け、小さな児童公園の前に差しかかった時だ。他に、ひと気はいない。

 突如として、植え込みの枝が私の前を塞いだ。草木が絡みつき、体じゅうが雁字搦めとなった。私は必死にもがいたが、どうすることもできなかった。

 痛い。体が千切れそうだ。

 公園中の草木がまるでバケモノのように、ざわめいている。違う。本物のバケモノだ。私は意識が遠のく寸前、体が勢いよく宙に持っていかれていくのを感じた。


 そう、奴らは丑三つ時に眠らないことにしたのだ。

                    (了)

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