第19話 第2エピローグ
「んぅ…」
カーテンの隙間から漏れ出る陽光が瞼をくすぐる。
「ふぁ…」
あくびを一つして上体を起こそうとするも全身がだるくて上手くいかなかった。
そういえばと僕は思った。
昨夜はあれから帰宅した後何度も愛しあった。
その記憶が蘇ってくる。
おかげで仲直りできたのだが頬が火照って熱い。
こういうのはいつになっても慣れない。
「ユキ…?」
珍しく昏葉さんが自分で起きてきた。
寝ぼけ眼をこすった後僕のことを強く抱きしめてくる。まるで存在を確かめるように。
一昨日から昨日にかけて昏葉さんに冷たい態度をとっていたからその反動なのかも。まるで離さないというようにくっつき虫状態の昏葉さん。かわいい。でも
「あ、あの…。昏葉さん少し離れて…。」
「え?…まさか…まだ怒ってる?」
「ちっ、違うよ!そうじゃなくて…うぅぅ…」
「?」
昏葉さんは慣れているようだけど僕は無理。
僕たちはいわゆる裸なのだ。昨夜愛し合ってそのまま寝たので当たり前だけど。恥ずかしい、頭から湯気が出そう。
「ねぇ…目がえっちいよ?」
僕の言わんとすることが理解した昏葉さんは僕の体を舐めるように見てきた。朝から元気だね。
僕はシーツで体を隠した。
「…ふゅーっこふゅー」
「口笛下手!、あはっなにそれっ!」
視線をそらし私は見てませんよアピールをする昏葉さんに僕は笑ってしまった。
「わっ!」
先ほどよりも強く抱きしめてきた。
「幸せだ…これさえあればもう何も望まない」
「…」
僕は昏葉さんの背中に手を回す。しばらく無言で抱きしめあった後、まだ時間があったので二人一緒のシーツに包まりながら僕たちは喧嘩をしていた時いかに焦ったか、大変だったかを話し合った。昨夜はその暇もなかったからね。
「へぇ、非色ちゃんに会ったんだ」
僕たちの親友、七瀬非色。同窓会には現れなかったので僕は会ってないけれど昏葉さんは会っていたらしい。羨ましい。僕は会えてないのに。
「いいなぁ…」
「……んっ」
「んむ!?」
唐突に昏葉さんにキスをされてぼふっとそのままベッドに押し倒される。何事!?
正面の昏葉さんはギラギラとした目をしていた。
「痛っ!」
鎖骨らへんにチクッとする痛みが走った。見ると内出血したようになっていた。キスマだった。
「嫉妬…」
「昏葉さん?」
「しよ」
「え?しよって?え、今!?ちょっ、ちょっと待って!ああああーーー」
僕は朝から嫉妬に駆られた昏葉さんに襲われたのだった。
.
.
.
.
「もぅ!遅くなっちゃったじゃない!」
「…こめん」
僕は急ぎで朝ごはんとお弁当を作っていた。
昏葉さんはいつもの定位置で僕のことをバックハグしてくる。
急いでいる時には少し邪魔感もあるが、それを言うと昏葉さんが落ち込む姿が想像できるので言わない。
それに昨夜の分と朝の分で大分足腰にダメージがきていて昏葉さんに支えてもらってないと辛いから仕方ない。
「〜♪」
あの昏葉さんが珍しく鼻歌まで歌っている。
何かいいことでもあったのかな。
「この日常が戻ってきた…。幸せ…」
どうやら僕と仲直りできていつもの日常が戻ってきたことがそんなに嬉しいみたいだ。まあ僕も同じだけどね。
「でも朝するのはもう禁止ね!」
「む…」
抗議の声が聞こえないが後ろを向けば不満そうな表情をしているのは丸わかりだ。
「でも…休みの日なら…いいから…ね?」
「!?」
昏葉さんは雷に打たれたように固まった。
再起動し、恐る恐る聞いてきた。
「いいのか…?」
「う、うん…、いいよ…、僕、昏葉さんのこと大好きだから…」
「んんっ、こらっ!めっ!」
「はい…」
どさくさ紛れに僕の体をさすさすしてくる昏葉さんを軽く叱り、料理を並べ、アレックスにご飯を出して、蛍を起こしに行こうと立ち上がる。
そのとき
ドガァァアアアアアアアアンッッ!!!!!
破壊音を上げて家の壁を突き破り侵入してくる黒い物体。
なに!?
僕の目は一瞬だけバイクらしきものを捉えることができた。
「ユキ!」
昏葉さんはすぐに僕を後ろへ庇ってくれる。
僕はアレックスを手招きして保護する。唯一ここだけが安全地帯だ。
今すぐにでも蛍の安全を確保したいけど身動きがとれない。
(何が起こったの?誰…?)
昏葉さんは砂煙あげる方向つまり侵入者のいる方向を鋭く見つめる。いつの間にか手には銃とナイフがあった。戦闘態勢だ。
僕も自然と目の前に意識が集中していく。
「ごほっ、こほっこほっ!もういやですわ」
(…女の声?)
「セシリア…?」
そんなとき昏葉さんの口から呟きが漏れた。
もしかして昏葉さんと知り合い?
「!?」
砂煙から現れた人物をあらためて眺める。
ヘルメットと黒のライダースーツを着用していて容姿が隠れている。ただし女性らしい丸みが確認できた。
ふともものホルスターには拳銃。リボルバーだったかな。映画で見たことがある。僕の中で警戒が高まっていく。昏葉さんの知り合いということはつまりそういうことだから。
「やっと…見つけましたわ…」
「あ…」
ヘルメットの下から現れたのは昏葉さんよりも明るい色のブロンドロングヘア。
昏葉さんにも劣らないレベル綺麗な人だった。外国人特有の鼻が高かったり、目が綺麗だったりと僕は目を奪われる。
「クレハ!ワタクシと一緒に本国へ帰りますわよ!」
夫婦喧嘩から仲直りして、その翌日。
次に世界最強の暗殺者を襲ったのは、暗殺者育成学校時代のライバル、セシリア・シンセサイザーだった。
僕は新たな波乱の幕開けを予感せずにはいられなかった。
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【後書】二章完結です。読者の皆様ありがとうございました!
貞操逆転世界で”世界最強の暗殺者”である妻の”主夫”をしています〜しかし世界中の刺客たちから求婚されて困っています!〜 遅桜ノンネ @osozakura_nonne18
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