第11話 第1エピローグ

「いけ!あれっくす!」


「に゛ゃーん!!」


昏葉さんと二人で帰宅し我が家の玄関扉を開けると、アレックスの上に乗って出陣しようとしていた蛍がいた。


蛍はどこから見つけたのか、頭には冒険家のような帽子、ごーぐる、リュックを背負っていてどこかへ出かけようとする格好だった。


「ぱぱー!!」


僕を認識した胸に飛び込んでくる。

腰にギュッと強く抱きしめられくっつき虫状態に。


「ぱぱ!かえるのおそい!!」


僕を見上げる蛍はむぅと膨れていてぷんぷん怒っていた。

謝罪と安心させる意味も込めて頭を撫でてあげた。

そしたら目を細めて気持ちよさそうにしていた。

だけど気を取り直したようにキッとする目をこちらに向けてきた。


「なにしてたの!あれっくすとさがしにいくとこだったよ!!」


その格好は僕を探しにいくためのものだったんだ。

そう思うと急に胸に込み上げてくるものがあり、僕はそれを誤魔化すためわしゃわしゃ蛍の頭をより一層撫でる。


「にゃー!くすぐったいよぉ!」


「ごめんね、蛍ちゃん。帰り道の途中でママとね、偶然ばったり会って遊んできちゃったの。その代わり今日は蛍の好きなオムライスつくってあげるね?」


「ほんと!?わーい!やったー!」


腕をぶんぶんさせて喜びを体全体で表現していた。


ごめんね。蛍を見ながら僕は心の中で改めて謝る。本当のことは言えない。きっと心配させてしまうから。

でも賢い蛍なら何か気づいているかもしれない。

だけど教えるのはまだ先でいいよね。

少なくとも今はまだ。


それからご飯を作るときも食べるときも、お風呂の時も、家族団欒で映画を見るときも蛍ちゃんはずっとくっついて離れなかった。


特にお風呂の時、昏葉さんと蛍の二人に背中を洗われたのはくすぐったかった。僕は肌が弱いから手で直接だったので、恥ずかしい想いとくすぐったい想いの両方が襲いかかってきた。

でも蛍ちゃんに心配させた自分への罰として必死に我慢し受け入れた。



、、、、、



「ふぅぅ…」


蛍が寝かせた後、二階のベランダにて一息。

あたたかいココアを入れて、月を見上げる。

今日は特に綺麗に輝いていた。

僕と昏葉さんが出会った日の月みたい。


「ユキ」


後ろからコーヒーを持った昏葉さんがやってきた。

冷えたら大変だと言い、僕の肩に上着をかけてくれた。やさしい。


昏葉さんは僕の横に並び同じく月を見上げていた。


「今日は助けに来てくれてありがとう」


改めてお礼を言う。


「当たり前のことをしただけ」


昏葉さんは特に何も気にした様子はなかった。怒っている様子もなかった。むしろ心配そうな目をこちらに向けてくる。どこまでも優しい。


「ごめんね、また能力使っちゃった」


「問題ないよ。ユキがしたいのならそれで。それに以前よりも能力に頼らず人助けもできてきているから。これから努力していけば大丈夫」


「ありがと…」


昏葉さんはこうして励まし、僕の意思を尊重してくれる。能力について本当は何か言いたいことや考えていることはあるんだろうけど、強引な介入はせずに支えてくれている。ほんとにすき。


二人肩を並べてしばらく月を眺めた後、「冷えたら大変だから今日はもう戻ろう」という昏葉さんに肩を抱かれて暖かい室内に戻る。


「あれ?」


そして案内されたのは蛍が寝ている僕の部屋ではなく、昏葉さんの部屋だった。


「ねぇ、昏葉さんーーきゃっ!」


僕は昏葉さんいベッドの上に押し倒されていた。


「えと…昏葉さん?」


「ユキが誘拐されたと聞いた時すごく不安だった…

それにユキたくさん奴らに触られてた、許せない」


「えっと…」


「上書きしたい」


昏葉さんは情欲に燃えるような瞳をしていた。


「今からマーキングする、もう誰にもとられないように」


いつものクールな昏葉さんとは違い、今はひとりの少女のような青々しさを覗かせていた。


「ちょっ、昏葉さんっ、まって、んっ」


サワサワと敏感な首元を優しく触られながら、

口にキスをしてくる。


「んっ…♡」


そのまま昏葉さんの唇が僕の首から鎖骨へと下がっていき、ピリッとした痛みが走る。

どうやらキスマークをつけたみたいだ。


「ふふっ」


昏葉さんはそれを愛おしげに撫でて満足そうな表情を浮かべた。


そのあとも徹底的に焦らすように周辺部位から責められて、僕ははぁはぁと興奮して息が上がってしまう。


「ねぇ、はやくして…」


恥ずかしかったけど催促の意味も込めてねだってしまった。男性からこう言うなんて淫乱だと思われないかな。顔から火が出そうなくらいあつい。


「はぁぁ…ほんとうにユキはかわいいな」


昏葉さんは覆いかぶさってきた。


「私しか見えないようにしてあげる」


もう僕の心はずっと前からあなたしか見ていないんだけどねと苦笑しながら、僕は昏葉さんを受け入れた。


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