第3話 夫、娘に押し倒される
昏葉さんともっとくっついていたかったけど時間の流れは無常であっという間に過ぎていく。僕はもう一人の家族を起こすため、きりのいいところで料理の火を止めて二階へ向かう。
「ほたるちゃ〜ん?」
「すぅ…すぅ…zzz…」
ドアからチラリと顔を出して中を確かめる。
奥のベッドですやすやと一人の少女が規則正しい寝息を立てていた。
彼女は
普段は天真爛漫な性格で走り回っていることが多い。
昏葉さん似で将来とてつもない美人さんになることが予想できる顔立ち。
本当によかった。僕は自分の顔に自信はないし、一時期本当に嫌いで鏡も見れなかった。でもクレハさんが可愛いと肯定してくれて今は自信を持てるようになったけど、やっぱり自分の子供には容姿で苦労はさせたくない。
「んむっ…」
ベッドに近いてみると、抱き枕にしがみつき小さい体を丸めている。何かに抱きついてないと寝れないのは昏葉さん譲りかな。かわいい。
ヒトサシ指を差し込むと、ギュッと赤ちゃんのように握り返してきた。かわいい!と心の中で悶える。
ただ、寝相が悪いのか上のパジャマの裾がめくり上がりおへそが見えてしまっている。お腹冷えていないかなと心配するのと同時に容姿が昏葉さんと似ているのでなんとなく見てはいけないようなものな気がして、そこから視線を外し、声をかけるため顔を覗き込む。
そのとき、蛍の目がカッと見開き目が合う。
「わぁっ!」
びっくりした。
急に目を開けるなんて思ってなかった。
「ぱぱー!!」
そしてそのままベッドに押し倒された。
娘に押し倒される父。どういう構図??
最近娘の成長が怖くなってきた。
この間だって、
「ぱぱ!!」
僕と蛍は電車に乗り隣町のショッピングモールへ向かっているとき、僕は痴女られていた。そのとき蛍は子供とは思えない俊敏な動きを見せ痴女の急所へ飛び蹴りをかましていた。
無事に痴女は駅員に連行。
ん?と思ってそのとき目を擦ったけれど五歳の娘が痴女を撃退した現実があった。まだ善悪の区別が完璧にはついていない年頃。蛍は天真爛漫だから余計に何かやらかさないか不安だ。
「ぱぱ!ぎゅぅぅー!!」
そんな僕の心配など知らん!というように蛍は僕に覆い被さってきて抱きしめてくる。昏葉さんとは違い、こちらに遠慮なしの強めの抱擁。ただ、純粋な気持ちからの抱擁なのは間違いないので嬉しい。
僕も蛍の背中に腕を回し娘からのハグを受け入れた。体温を感じる、昏葉さんよりも暖かい。子供だからかな。気持ちがいい。
蛍は少し汗をかいているようだった。額に張り付いていた何本かの前髪を払ってあげた。
「にははっ、ぱぱ捕まえたー!」
目の前にニカッとした無邪気な笑顔を浮かべる蛍。
その表情を見ていると何か悪戯をしたくなってきた。
なので僕は手を蛍の背中から脇腹へ移動させた。
「こちょこちょこちょっ!!」
「にゃはははははっ!!」
ベッドの上が乱れるのも関係なしとばかりに蛍は笑い転げて暴れる。僕は容赦なく追撃して足裏や首周りもくすぐる。
「こんにゃろー!」
もちろん蛍も反撃してきて僕の真似をして脇から責めてくる。僕は笑い声を上げて、足をバタバタさせてくすぐったさをどうにか逃す。しかし次に蛍は首元をくすぐってきた。
「くらえー!こちょこちょー!」
「ちょっとまって、そこはっ、んん〜゛ッ」
僕はくすぐられて出る声とは違う声が出そうになるのを必死に我慢するだけで精一杯だった。蛍は目敏くそのことを察知して僕は弱点を責められ続けた。
十分ほどベッドの上でじゃれついた後、
二人息絶え絶えにベッドの上に寝転がる。
下から昏葉さんの呼ぶ声が上がり、
明日の朝まで一旦休戦協定を結んだ僕たちは二人仲良く手を繋いで一階へ降りた。
==================================
良かったら★やフォローなどお願いします!
投稿モチベーションアップに繋がります
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます