第2話 妻、朝がよわよわ
ジリジリジリジリジリィッッ!!!!
「!?」
目覚ましが大音量で寝室に鳴り響いていた。
随分と懐かしい夢を見たなぁ。僕は感慨深くなっていた。
どうせならそのまま続きを見たかったな。
「んっ…」
だが残酷なことにカーテンの隙間から漏れ出る太陽の光が起きる時間だと告げていた。陽光が目に直撃し脳が冴え渡る。
仕方なく僕はむくりと身を起こし目覚ましを止めた。
んんー!!とひと伸びした後同じベッドで隣に寝ている人物へ視線を向けた。
「すやすや…zzz」
隣には少女のようなあどけなさを残こした寝顔があった。閉じられた瞼から覗くまつ毛は長く、鼻筋も透き通っていて、肌もきめ細かい。控えめに言っても僕の人生で見てきた中で一番綺麗だ。
ドイツ人ハーフだからかな。
金髪のその女性は水色の高そうなパジャマを身に纏い、猫のぬいぐるみをギュッと掴んで熟睡していた。
そう。この女性こそ僕の妻である
本名はクレハ・フィーメール。実は暗殺者なのだ。
数年前まで世界各国を飛び回り、”世界最強の暗殺者”という異名で呼ばれて恐れられていた存在だ。しかし現在は僕たち家族と一緒に暮らしている。
「もぅ、隙だらけだよ」
「んぅ…」
普段はとてもクールで完璧超人然としているのに寝ている時は無防備で可愛いとか僕の奥さんは可愛くてずるい。まあ本人にかわいいと言ったら微妙な反応が返ってくるので言わないけど。
そのあと僕は昏葉さんと頬をつんつんして一通り反応を楽しんだ後、頬にキスをして、お弁当作りのために一階へ降りた。
、、、、、
我が家は昏葉さんが建ててくれた。
しかも広い。外見は洋風レンガ作り。庭付き、昏葉さんがDIYして作ってくれた観葉植物の緑に囲まれたウッドデッキもありそこで読書するのが気持ちいい。
そんな我が家のキッチンは広い。
冷蔵庫、オーブン、レンジはそれぞれ二台ずつ、フライパン、包丁種類など調理器具も豊富だ。これらは昏葉さんが僕のために用意してくれた。男としてやはりテンションが上がる。
この場所を好きに使っていいというのは住み始めて数年経った今でも心が躍る。
「はっはっはっ!」
そのときリビングに置いてあるドッグハウスから我が家の愛犬アレックスが餌をくれというように僕の足元に絡んできた。
「はいはい、すこし待ってね〜」
棚の中からドッグフードを見つけて、ドッグフード専用の骨のマークの入った皿にふりかけアレックスの前に出す。
「はふっはふっ」
「おいしー?」
「う゛まいっう゛まいっ」
「…」
この犬は絶対普通の犬じゃない。しゃべる。すごいダンディーな声だ。
この犬は昏葉さんが拾ってきた犬なのだけど、昏れ葉さん自身はアレックスが喋るところを見たところがなく僕の前でだけ喋るらしい。
それに昏葉さんが遠征で二日三日家を開けていた時、昏葉さんの部屋のベッドの上、僕は欲求不満で一人自分の体を慰めていた。
そのときにアレックスがひとりでにドアを開けて侵入できる賢さを持っていることを知った。あの時は気まずそうな表情を浮かべたアレックスがそっと出ていった。ベッドの上、一人恥ずかしさで悶え苦しんだ記憶がある。
僕はお前は何者なんだという意味も込めて、おっさんのように渋いアレックスの顔を撫で回す。目を細める姿は愛嬌がありとても可愛い。そんな姿を見ているとまあ何者でも別にいいかという気持ちが湧いてくる。
「ん〜」
階段から眠たげな妻が姿を現した。目が開いてなくてふにゃふにゃしてた。
「おはよう、昏葉さん」
「んん〜」
昏葉さんは朝が弱い。
”世界最強の暗殺者”がそれな様子で仕事のときは大丈夫なのか?と思ったけど、家の中でくらいはゆっくりしてほしい僕としてはまあ問題ないかと思い直す。
昏葉さん水道で口を濯ぎ、冷蔵庫から水を取り出しごきゅっと飲み干した。そして寝ぼけたままお弁当料理中の僕に後ろから抱きついてくる。頬を肩にのっけてくる。形が崩れてむぎゅっとなっている。まるでそこが私の定位置と言わんばかりにずぽっと綺麗に収まっていた。
ぼぉーっと僕の料理風景を眺めている。
「もうお顔洗いにいってきたら?」
「んー、もう少しこのままで」
後ろから抱きしめる手の力が少し強くなった。
まるで離れたくないと言われているようで。
「もぅ、甘えん坊なんだからぁ」
と僕は口ではそう言いながら口角が上がるのを止められなかった。
この朝の心地よい時間が何よりも好きだ。僕は素直にその欲求に従いこの甘美な時間に身を任せる。
僕は今本当に幸せだ。
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【後書】
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