【米寿侍・田原総一朗がゆく!】 連作時代物series
嵯峨嶋 掌
第一話 居座り善右衛門
米寿侍、困惑せり
奇行の多さで知られる、
ほとんど屋敷
……親の代に藩から与えられた屋敷で、
寺社の総門と
「ほうぉ……」
と、感歎の吐息を洩らした
「贅沢なもんだな」
と、いつもの皮肉たっぷりな笑みをやや
「ですが……」
と、すかさず総一朗を
「……素晴らしいのはこの門だけのようです。
と、すばやく話題を転じてみせた。
「ああ」
田原総一朗が頷いた。
おのれの
……論戦に破れた者には、藩内唯一の
……とはいえ、この
屋敷には、
「あの……見てきます……」
ささっと若侍が門をくぐって駆けて行った。
その真吾が息せき切って立ち戻ると、
「お会いに……なられるそうです」
と、囁くような低い声で言った。
「お、どうしたのだ? 何か
小首を傾げた総一朗は、真吾の顔が青ざめているのを不審におもった。
「あ……いえ……」
急に真吾は口ごもった。
どうやらかれは何度かこの屋敷
「どうした? 叱りつけられたのか?」
「い、いえ、剣の勝負が……」
「は……?」
「はい。こうお伝え申せと……。口上のまま、申し上げます。『……口では米寿侍どのには
ようやく善右衛門の伝言の主旨を理解した総一朗は、
「ひゃあほぉい」
と、頓狂な声を上げた。
刀を抜くのは……じつに久方ぶりのことである。真吾が案内した先は、屋敷の中庭に面した板敷きの道場であった。
「ここは……?」
「はい。元々、藩の剣術修行場として建てられたものだそうです」
それほど広くはないが、ざっと二十畳ほどの空間で、灯り取り窓が天井に沿うように
小此木家の
それと入れ違いに現れた中肉中背の人物は、左手に大刀を
「おお、お
善右衛門がじろりと総一朗を一瞥すると、
「なんだぁ……? 若いのう」
と、
「や……!」
と、一足
(やれやれ……)
と、
(ひゃあ、
吐息を
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