混血鬼のアリア~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
真夜中の不法投棄
月のない真夜中。闇に
ここは
その中心に巨大な大穴、地下深くへと続く大迷宮を
迷宮からは数多くの財宝や
世界中から多種多様な人種、種族が
「ほら! 早くしろ! この時間ならもう
「へ、へい! けど、
「だから……バラして運ぼうって言った、じゃん、アタイは……!」
「うっせ! うっせ! 口動かさずに
人が一人は入りそうな細長い
★ ★ ★
そんな彼らの様子を近くの建物の屋上から
「あー、あれ……入ってるっすよ、入ってる! 風下ですし、間違いないっす!」
「そう……今夜もゆっくり休めそうにないわね……」
両手で眼鏡を作りはしゃぐ
「今日は新月っすからねぇー。
「えぇ、そうね……。じゃぁ、私は先に行くから……」
「はーい、お疲れーっす。ボクもあとから合流するっすー」
言うが早いか軽い感じで屋上から飛び降りる銀髪の少女を、何事もないように見送る。
視線の先には先ほどの三人組……大穴まであと少し。ちょっと急いだほうがいいかもしれない。
★ ★ ★
「早くしろ! もう少しだ!」
「へ、へい! ほら、
「
「同感だわ……赤い
「あー、いいすねぇ~。オイラは
「アタイは……キツめの
「分かった! 分かった! この依頼が終わったら
瞬間、生じた小さな違和感に三人組の先頭を歩いていた男の足が思わず止まる。
「ちょっ、急に止まらねーでくださいよ!」
「早く……重い!」
「いや、待て! そこにいやがるのは誰だ!?」
振り返り、集団の最後方へ向けて叫ぶ。
すると夜の
「今晩は、いい夜ね……」
美しい銀色の髪を腰辺りまで伸ばした一人の少女だった。
けれど、
こいつは
「あら、情熱的ね……。でも、血の気が多いのは嫌いなの……」
そう言うと
「あ、兄貴?! い、今のは?!」
「分からん! 分からんがヤベーやつだ! 迷宮の化け物かもしれん!」
麻袋を抱え怯える
「あら? 化け物
「ヒッ! アンタ! アンタァ!」
次の瞬間、闇の中からスッと
「バネッサアァアアァアアアァアアアアアア?!」
「姐御おぉおおおぉおおぉおおお!?」
しかし、その呼び声に返ってくる声はない……。
「姐御ぉ……姐御ぉぉ……」
「泣くなダンダ! 男だろうが! そんな暇があったら荷物をとっとと穴へ放り込め! その間、こっちは俺がなんとかしておく!」
「うぐ……へ、へい……」
男に怒鳴りつけられ子分、ダンダは麻袋の端を肩に掛け、
「さぁ! 来やがれ、化け物! 俺が相手になってやる!」
短剣を闇に構え、己を
「だから、化け物扱いしないでくれる?」
再び闇から浮かび上がるようにして銀髪の少女が姿を現す……。
不愉快そうに男を
「はっ、はっはっ……!
少女の
迷宮外に実在する数少ない
「えぇ……分かったら、
次の瞬間、男の腹部に衝撃が走り、身体が
そのまま地面へ叩き付けられ、薄れる意識の中で目に焼き付いたのは、闇の中で笑う少女の姿。
★ ★ ★
「お疲れーっす、アリアっち! こっちも無事制圧したっすよぉ~」
銀髪の少女、アリアが声のするほうへ視線を向けると、大穴の近くで赤髪の少女がにこやかに手を振っていた。
その足元にはダンダと呼ばれていた子分の男が気を失い転がっている。
「お疲れ、ベオナ。それで? 麻袋の中身は?」
「いやー、やっぱり人だったっすよ~。さっすがベオナちゃんの鼻っすよねぇ~」
アリアに尋ねられた赤髪の少女、ベオナはそう答えると得意げに鼻を
それを聞いてアリアは深々と
封印迷宮シルメイズ。その底の見えぬ大穴には、この手の後ろ暗いモノが
そうして、それらを今夜のように取り締まるのがアリアたち『掃除屋』の仕事だった。
「はぁ~。ならその自慢の鼻で荷物をどこから運んできたか、追ってくれるかしら? どうやら依頼主がいるみたいなの……」
「うへぇ~、残業確定っすかぁ?」
「えぇ、そうね。夜明けまであと六時間、早く終わらせたいわね……」
「アリアっち、日中はへっぽこっすもんねぇ……」
「それはベオナも同じでしょうに……」
自分は関係ないというような
「いや~、ボクは昼間でも只人種並みには活動できるっすけど、アリアっちは仔犬以下じゃないっすかー」
指摘され、思わず
太陽に弱い
ただ逆に夜ともなれば、力自慢の
まぁ、だからこそ仕事は真夜中の内に終わらせる必要があった。
「うるさい……。いいから行くわよ……」
「了解っすー。今、探索者協会にこの人らの回収もお願いできたんで問題なしっす!」
いつの間にか縄で
「はぁ~、早く帰って葡萄酒が飲みたい……」
「いいっすねぇー。じゃあ、ボクは蒸留酒のミルク割りで!」
「ベオナ、あれ好きよね? 美味しいの?」
「アリアっち? 人様の趣味に口を挟むもんじゃないっすよ?」
「……それもそうね」
なんて仕事終わりの予定を立てつつ、アリアとベオナの二人は夜の闇に消えていく。
封印迷宮都市シルメイズ、その真夜中の平和を守っているのは、昼間には
……to be continued?
混血鬼のアリア~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます