第2話 王様に転生したよ

 ふっと気がつくと、広いベッドの上にいた。


 転生したようだ。


 記憶を漁る様に集中する。


 転生前の記憶と混ざり、気持ち悪さで吐きそうになる。


 俺は今王様になったようだ。


 名前は、ワルダーク・ミースル(45)


 この世界でも1・2を争う大国の王様だ。


 贅沢三昧な生活、女癖も悪く取っ替え引っ替えしている。


 今も横には裸の女が寝ている。



 王には秘伝の召喚魔法が代々伝えられていて、先日も召喚魔法を使ったばかりであった。


 今回の召喚は、隣国のリゾート地を独占したいが為に行われたようだ。


 もちろん召喚者達には、勇者などと煽て倒しある事ない事吹き込んでいた。


 こいつの悪い所は、思い通りにならなかった召喚者達を奴隷または始末しているとこだろう。


 元の世界に帰れるといい、召喚魔法を使うフリをして隷属魔法を使用。


 鵜呑みにせずに勘づいて逃げ出した者達も、隷属済みの元勇者に始末されるという結末。


 最悪の転生先じゃないかと、項垂れる。


 ここからトゥルーエンドまで持っていける自信なんか微塵もない。


 だが俺に選択権はない。


 やるしかないのだ。





 翌日


 簡単にバッドエンド回避のルートを考えてみた。


 侵略略奪行為をやめる→召喚者達に謝罪と帰還などの希望に対する協力→隷属者達の解放と和解→召喚魔法の廃棄→真っ当な国政→転生


 上手くいく気がしないが、やるしかない俺。


 まず手札を増やす為に、味方を作らないといけないので城を散策。


 王とは言え、1人では太刀打ちできない。


 記憶を頼りに味方に出来そうな者を探していく。


 いつもついてくる騎士も考えはしたが…


 護衛の騎士は見かけ倒しで、金とコネでなっているものばかりだった。


 金で掌握出来るが、実力が無い。


 これではいつ暗殺されてもおかしくないのでは?と思ったが、実際には隷属した召喚者が手駒になっていた。


 事情を説明して味方に引き込もうとしたが、隷属中は思考が止まり命令にしか反応せず、かと言って隷属を解けばすぐ殺される展開しか見えないかった。


 次に目を付けたのは、染まっていない従者や官職たち。


 どんなに腐った国でも真面目で能力の高い人間はいるのだ。


 城の応接間にめぼしい人達を次々と呼んでもらう。

 惨敗である。


 むしろ話を聞いてもらうどころではなかった。


 

 ある者は、身体目当てかと怯える。


 ある者は、悪事の片棒など御免だと立ち去る。


 ある者は、身内に何かされたと気を失う。


 ある者は、姿すら見せない。


 ……


 うん、分かってはいましたよ。


 今更こんな悪王に味方する人なんていませんよね。


 完全に詰んでるんじゃかいかな。


 凹んでいても仕方ないと行動に移る。


 



 会議にて隣国への侵略行為の中止を宣言した。


 一瞬の沈黙の後、罵詈雑言の嵐。


 悪王とはいえ王様なんですが、ひどくない?


 しまいには王妃や側室に責めたてられる始末。


 ハゲとかデブとか聞こえるけど、斬首案件じゃないのかい。


 もう中枢が腐り切っている。


 


 何一つ上手くいってない。


 玉座に腰掛け、天井の模様を数えて逃避中。



 よし、決めた。


 今回の召喚者達と隷属者達を集めた。


 まとめて帰す事にした。


 中には残りたい人がいるらしく、文句を言ってるが知ったこっちゃない。


 俺が呼んだけど俺じゃないし、帰った方が絶対幸せだと思うよ。


 隷属者達は無言だったが、きっと帰りたいだろう。


 意を決して召喚魔法を発動待機にする。


 そして、隷属魔法を解除する。


 怒号や悲鳴を上げているが、本当に可哀想だと思う。


 せめて帰してあげなければなと、召喚魔法を発動した時だった。


 グサッ


 うーん…死ぬほど痛い。


 いや死ぬんだろうけども!


 チラッと見ると、汚れ仕事をさせていた元勇者であった。


 まぁ…気持ちはわかるよ。


 でも俺は無実なんだよ。


 分かっては貰えないけどね。


 痛みを堪え、最期の力を振り絞る。


 召喚魔法を無事発動出来たのを見届け意識がなくなる。




 お早いお帰りでと、女神ががっかりした様子で出迎えた。


 何もいい返す気にもならず、さっさと転生をしてもらう。


 次はまともなところに…無理だろうな…

 

 



 



 

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