第2話 転生について
「ここは、何処だ・・・?」
男に包丁で腹部を刺され意識を失ってしまった零時は異世界転生系のライトノベルにありそうなセリフを口にしながら目を覚ました。
目を覚ました零時は身体に若干の違和感を覚えながらも身体を起こし辺りを見渡した。
零時が目を覚ました場所は建物や木々などが一つも無く、人も一人も居ない真っ白な空間だった。
「建物の一つも無いし、人も一人も居ないし・・・。一体、ここは何処なんだ・・・?」
零時は物も無く、人も居ない真っ白な空間を見渡しながらそう呟いた。
零時がそう呟いた後、どこからともなく零時の目の前に三人の男女が突然姿を現した。
「うむ・・・。どうやら、ようやく目を覚ましたようだのぉ」
「どうやら、意識ははっきりしているようねぇ」
「色々とパニックかもしれないけど、一応何か反応してほしいんだけどなぁー」
「えっ・・・あっ・・・はい。大丈夫です。意識ははっきりとしています」
サンタクロースのような長い白い髭が特徴的な老人がそんなことを言いながら指をパチンと一回鳴らした。
すると、零時の目の前にどこからともなくレトロな昭和風のちゃぶ台と人数分の座布団と湯呑みに注がれているお茶が突如出現した。
「さぁ、取り敢えず座って座って!!」
「えっ・・・わ・・・分かりました」
長い金髪の髪の毛が特徴的な若い女性がにこやかに零時に笑いかけながら座布団の上に座るように促した。
女性にそう促された零時は若干の動揺を見せながらも女性の指示に従い目の前に出現した座布団の上に座った。
そして零時が座布団の上に座ると三人の男女はそれぞれ他の座布団の上に座った。
「・・・・・・あの、ここって天国なのでしょうか?」
「・・・ふむ。君の質問に対しての答えは半分正解で半分不正解ってところじゃのぉ」
「えっ?それって、一体どうゆうことなんでしょうか?」
零時はちゃぶ台の上に用意されているお茶に一切手を付けることなく三人の男女に対して「今居るこの空間は天国なのか?」と聞いた。
この、零時の質問に対して老人は「半分正解で半分不正解」と言ういかにも曖昧な答えを口にした。
「つまり、この空間は死後の世界ではあるが天国では無いということじゃ」
「えっ?天国じゃ無いっていうことなら一体ここはどこなんですか?」
「ここは、言わゆる天国と地獄の狭間に存在する天と地の狭間という場所じゃ」
「て・・・天と地の狭間ですか?」
「うむ。天と地の狭間じゃ」
老人の話によるとこの白い空間は天国でも地獄でも無く天国と地獄の狭間に存在する天と地の狭間という場所だった。
「で・・・でも、何で俺は死んだのに天国や地獄に行かずにこの天と地の狭間に来たんですか?それに、あなた方は一体何者なんですか?」
零時は老人の言葉を聞き明らかに動揺しながらも三人の男女に立て続けに質問をした。
「ふふっ、そんなに慌てなくっても大丈夫よ。君の質問には私達が一つずつ丁寧に答えてあげるから」
「そうそうー。そのために僕達が君の前に姿を現したんだから」
「それじゃ、ゆっくりと一つずつ君の質問に答えようかのぉ」
立て続けに質問して来た零時に対して金髪の女性とショートカットの女性がそれぞれそう言った。
そして老人は自慢の長い白い髭をいじりながら零時の質問に対して一つずつ丁寧に答えていった。
「まずは、儂達の存在について説明しよう。儂達は君の世界で言う神様と言う存在じゃ。儂は創造神のガンツと言い、君の隣に居る女性は愛の神アイリスと言い、儂の隣に居るのは生命の神タマンダじゃ」
「か・・・神様ですか?」
老人は零時に自分達は零時達の世界で言う「神様」と言う存在だと言った。
そして老人が代表として創造神のガンツ、金髪の女性は愛の神アイリス、ショートカットの女性は生命の神タマンダと自分達の存在を零時に説明した。
零時は老人の話を聞きただただ動揺するしかなかった。
「ふふっ。そんなに驚かなくっても大丈夫よ」
「そうそうー。神様なんって結構何処にでもいる存在だから、別に驚く必要なんかは無いよ!!」
「い・・・いや、そうゆうことじゃ無いんですけど」
「さてと、次は何故お主が天国や地獄では無くこの天と地の狭間に来たのかと言うことを説明しよう」
生命の神タマンダの発言に対して若干引いている零時を他所に創造の神ガンツは零時に対して何故零時は天国や地獄では無く天と地の狭間に来たのかと言うことを話始めた。
「まず、死んだ人間は天国や地獄に行くじゃろ?」
「え・・・えぇ、まぁそれぐらいのことなら理解していますけど」
「だが、稀に君見たく他人のために命を落とす人間も居るのじゃ。そうゆう人間は天界のルールとして天国や地獄には行かさずにこの天と地の狭間に連れて来ることになっているのじゃ」
「そして、この天と地の狭間に連れて来た人間に第二の命を与え、地球とは違う別の世界、つまり異世界に転移させることになっているの」
「まぁ、簡単に説明すると他人のために命を落とした君にご褒美として新しい命を与え異世界に転移させてあげるってことだよ」
「い・・・異世界に転移ですか?」
「うむ。異世界に転移じゃ」
どうやら、三人の神々の話によると天界のルールとして他人のために命を落とした人間は天と地の狭間に行き、そこで神々から第二の命を与えられ地球とは別の世界異世界に転移することになっているらしい。
「と・・・取り敢えず、異世界に転移することは理解しましたけど俺はこのままの状態で異世界に転移するんですか?もし、そうなら俺異世界で生きて行く自信が無いんですけど」
「うむ。そのことについては心配ご無用じゃ」
「これも、天界のルールとして異世界に転移させる人間には私達神が仮の恩恵を授けることになっているの」
「仮の恩恵?」
「本当はちゃんとした恩恵を授けて上げたいんだけど、天界のルールとして異世界に転移してから七年目の誕生日を迎えた日に恩恵を授けることになってるから今の状態だと仮の恩恵しか授けることができないの」
「な・・・なるほど、そうなんですね」
「あぁ、そうゆうことじゃ」
零時は三人の神々に「自分が異世界に転移した時、どうやって生きて行けばいいのか」と聞いた。
それに対してアイリスが代表として「仮の恩恵を授けることになっている」と答えた。
零時は「仮の恩恵」と言う言葉を聞き疑問に思い首を捻ったがタマンダの説明を聞きなんとなくだが理解したようだ。
「さて、説明も終わったことだし、そろそろ君に儂達の仮の恩恵を授けるとするかのぉ」
「そうね」
「そうだね」
「それじゃ、私達の前に来てくれる?」
「は・・・はい」
アイリスにそう促された零時は三人の前に移動した。
自分達の前に移動した零時に対して三人の神々はそれぞれ零時の頭に手を添え何かを零時の身体に流し始めた。
「よしっ、これで仮の恩恵を授けることができたぞ」
「こ・・・これで、大丈夫なんですか?」
「えぇ、大丈夫よ。これで、君は私達の仮の恩恵を授かったことになってるから」
「そ・・・そうなんですね」
数十秒後。
特に何も無く無事に三人の神々は零時に仮の恩恵を授けることができた。
このあっという間の出来事に対して零時は思わず驚きの声を上げてしまったがアイリスの話を聞き直ぐに納得した。
「さてと、そろそろ君を転移させる準備に取り掛かろうかのぉ」
「一応、転移する前に私達に聞いておきたいこととかはあるかしら?」
「そ・・・それじゃ、俺がこれから転移する世界はどうゆうところなんですか?」
「君が転移する世界は、君が居た地球よりは文明が進んでいないところだけど、その代わりに魔法など軍事関係などは発達してしている場所よ」
「更に、それに付け加えるとしたらその世界の文明は地球で言う十六世紀ぐらいの文明だと思えっていれば大丈夫だよ」
「そ・・・そうですか、分かりました。ありがとうございます」
ガンツが転移の準備に取り掛かっている間アイリスが零時に何か自分達に聞いておいて欲しいことはあるかと聞いた。
すると零時はこれから自分が転移する場所はどんなところなのかと聞いた。
この零時の質問に対してアイリスとタマンダがそれぞれ答えた。
「もう、質問などは無いかのぉ?」
「はい、もう大丈夫です」
「よしっ、それじゃ転移を始めるかのぉ」
「お・・・お願いします」
ガンツがそう言うと零時の頭に手を添えた。
すると零時の身体は瞬く間に青い光に包まれた。
「それじゃ、あっちの世界でも元気に暮らすんだぞ」
「次は、百歳ぐらいまで生きてね!」
「転移して直ぐに死んじゃうとかは勘弁してよ」
「は・・・はい、できるだけ頑張ろうと思います」
三人の神々からそれぞれ激励に近い言葉を貰った零時は三人の神々にそう言い残しその場から姿を消した。
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