第4話
しばらく走って、気づいたら街に出ていた。僕はあまり外の世界のことを知らない。学校には行っていたけどそれくらいだ。欲しいものは常に家にあったし、何か欲しいといえば買って貰えた。何一つ苦労してこなかった僕には、小さい妹と2人きりで生きていくことに不安があった。街の人達は皆痩せていた。この国の人々は裕福ではないようだ。父さんが嫌われている理由もそこにありそうだな。
「アンナ、大丈夫か?寒くないか?」
「うん、大丈夫だよ。」
僕は少し歩く度にアンナの体調を気遣った。街に出てから僕はよく、『魔女』の噂を耳にした。御伽噺の中の話だと思っていたが、本当にいるのか。僕は魔女に少しづつ興味が湧いた。だってその魔女は『色を見せる』ことが出来るらしいのだ。逆に、『色を奪う』ことも出来るらしい。
「お兄ちゃん、私魔女に会ってみたいな」
わがままひとつ言わないアンナが唯一僕に言った事だ。だから僕も気になっていたんだ。森の奥に住むという魔女に。
僕は一度、街の人に魔女について尋ねたことがある。
「あの、魔女にはどこに行けば会えるのでしょうか?」
「あんた本気で言ってるの?魔女は危険だよ、会いに行くなんて聞いたことがない。」
そう言われてしまって、教えては貰えなかった。魔女は随分と嫌われているようだった。
「お兄ちゃん、魔女に合うの辞める?」
アンナは不安そうに僕を見た。
「なんで、あいつら別に魔女に何かされたって言ってなかったし、悪いやつかは会ってみなきゃわからないよ」
「お兄ちゃんはすごいよね、人に流されないというか、ちゃんと自分で考えてて、私はできないや。」
「そうか、ありがとう。でも、僕はアンナみたいに優しくないよだから、」
僕はアンナの手を強く握った、目をしっかり合わせて言う。
「二人ならなんだって出来る」
「うん!そうだね!」
そう言って嬉しそうに笑う妹を、僕は守ると心に誓った。
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