第3話

「え?怒られちゃうよ」


「その時は僕も一緒だよ。逃げよう」


僕らはその日から夕食後、僕の部屋で作戦会議をした。周りの人達の目を盗んで少しづつ食料と金を集めた。


「ねえ、本当に逃げるの?」


「あぁ、家族を傷つけるなんて、僕は許せないよ。外の世界はもっと、優しいはずさ。」


「でも、みんなお兄ちゃんには優しいんでしょ?」


「うん、ごめん。」


「ううん。違うの。そういう事じゃなくて、ここ、お兄ちゃんにはいい場所なのに、私と一緒に逃げてくれるの?」


気に入られてる僕のことを恨んでると思っていた。それなのに、こんなにも優しい子じゃないか。なんでこんな目に合わないといけないんだ。


「僕は、アンナと一緒に逃げたいんだ。2人で幸せになろう。僕たちにはその権利があるんだよ。」


「お兄ちゃんは優しいんだね」


そんなことないんだよ。僕は、ずっとアンナから逃げていたんだ。君が辛そうにしている時も僕は無意識に見ないふりをしていたのかもしれない。最低なお兄ちゃんだよ。だからせめて、助けてあげたいんだ。


召使いの目を盗んで、僕らは思っていたよりも簡単にお城の外に出ることが出来た。結局ここにいた人たちは、僕らのことなんて気にしちゃいなかったのかもしれない。夕刻を無視して僕らは必死に走った。


遠くへ、もっと。誰も追いつけない所まで。


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