第2話
「誰だ」
「お兄ちゃん、わたしよ。アンナ。開けて」
アンナが僕の部屋に来るのは珍しい事だった。僕が冷たくするから普段はあまり関わることは無いのだ。
僕は何も言わずにドアを開けた。
「お兄ちゃん。ごめんね急に」
「ああ、どうしたんだ?」
アンナは何も言わない、ただ悲しそうに微笑んでいるだけだった。僕はふと彼女の腕に赤黒い痣があるのに気づいた。
「おい、その腕はどうしたんだ?」
「あっ、なに?腕どうかなってた?」
そうか。色が分からないから痣があるのに気づかなかったのか。それにしてもこんなに酷く色が変わるほどにぶつけて気づかないことなんてあるか?
「ああ、腕に痣があるよ。心当たりは無いのか?」
「え、いや、ないよ。教えてくれてありがとう!」
僕はしゃがんでアンナの両手を握った。
「実は僕も、最近学校で殴られたんだよ。なんか親父がどうたらって言ってさ。僕は関係ないってのにさ」
アンナは何も言わない。
「え?違うのか、じゃあどうしたんだよ、」
「ねえ、お兄ちゃん誰にも言わないって約束してくれる?」
「え、ああ。」
「お母さん、なの。」
え?母さんが?確かに妹に対して当たりが強いと思うことはあった。でも、僕には優しくて、それで、
「おい、なんで、いつから」
「1年くらい前から」
アンナは泣きながら言った。僕はなんで気づかなかったんだ。ずっと僕が一方的に妹から逃げていたから。変化に気づけなかったんだ。母さんも父さんも、俺にはいつも優しく接してくれる。でも裏では、そんなことって。
「そうだったのか。ごめんな気づかなくて」
そう言って抱きしめることしか出来なかった。僕は自分を憎んだ。僕に優しくしてくれるから、それでいいのか?同じ家に生まれたんだ。僕だけ楽に生きていて言いわけがないだろう。
「私、なんで、嫌われちゃったんだろう。ただ、愛されたかっただけなのにな」
アンナはそう言って、悲しそうに笑った。その時、僕の中の何かが変わった。
「なあ、アンナ。城を出よう。」
「え?怒られちゃうよ」
「その時は僕も一緒だよ。逃げよう」
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