第1話

「クルトは上手に食べるわよね、偉いわ。」


母さんの言葉に僕は、何も言わず手を動かし続けた。


「それに比べて、アンナはなんで綺麗に食べるなんてそんな簡単なことも出来ないの」


「ごめんなさい、ママ」



アンナは手を止めて俯いた。これはいつもの事だ。僕は何をやったって褒められて、妹のアンナは怒られる。綺麗に食べることが簡単なことなら、僕に『偉い』なんて言わなくてもいいのに。僕は心の中で反論した。ただ、僕はアンナのことが好きではなかった。アンナは生まれつき色が全く見えない。僕も幼い時は見えなかったのだが、ある日を境に見えるようになった。アンナは小さい頃からずっと僕に付きまとってきて『お兄ちゃん、これは何色なの?』って聞いてくる。最初は可愛らしいと思って答えていだが、何年も経つとそれすらも鬱陶しく思えてくるのだ。食事が終わって僕は部屋に戻った。



最近僕の父さんの評判が悪い。僕の父さんはこの国の王なのだが、最近やりたい放題やっているらしく、僕には関係ない事だと思って何も気にしていなかったがこの前学校で突然僕は喋ったことも無い上級生に呼び出されて何故かぶたれた。その時は流石の僕でもただ事ではないなと思ったのだ。しばらく部屋でそんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「誰だ」


「お兄ちゃん、わたしよ。アンナ。開けて」


アンナが僕の部屋に来るのは珍しい事だった。僕が冷たくするから普段はあまり関わることは無いのだ。

僕は何も言わずにドアを開けた。


「お兄ちゃん。ごめんね急に」


「ああ、どうしたんだ?」


アンナは何も言わない、ただ悲しそうに微笑んでいるだけだった。僕はふと彼女の腕に赤黒い痣があるのに気づいた。


「おい、その腕はどうしたんだ?」


「あっ、なに?腕どうかなってた?」


そうか。色が分からないから痣があるのに気づかなかったのか。それにしてもこんなに酷く色が変わるほどにぶつけて気づかないことなんてあるか?


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