第20話
ソルの攻撃を受け、うずくまったジャンババンはそのままの体勢で笑った。
「くっくっく・・・うっふっふっふ・・・強烈な一撃だ。・・・今まで、沢山の強敵と闘ってきました。大顎のルクダイン、森の黒山羊、シャドウウルフ・・・」
ジャンババンは勢いよく立ち上がった。
その口の端には血が見える。
どうやら内臓を損傷し、吐血に至ったようだ。
「それらと比べても遜色のない、良い一撃でした・・・まあ、その、その前に子供だましのようなアレはどうかと思いますが、しかし・・・まあ、アレはアレで効果があったわけですし認めざるを得ませんね」
ジャンババンは血を地面にペッと吐き出し、構えを取った。
「さあ、今度こそ本気です。思う存分やりましょう」
その時、シアリーズはジャンババンの本気の力を感じ、奥の手を使うべく叫んだ。
「・・・メリーアン!あれを!」
しかし、メリーアンは戸惑っている。
「・・・でも、シア、あれは・・・」
それに対し、シアリーズは厳しい口調で言った。
「あれを使わなければ、皆、死ぬ!メリーアン!早く!」
メリーアンは暫く考えこんでいたが、決心して懐から何かを取り出し、それを掲げた。
ソルはシアリーズの言葉が気になりつつもジャンババンから目を離せずにいた。
後ろに居るメリーアンのことも見えていない。
シアリーズが言う「あれ」とは何なのか?
メリーアンは結局、それを使ったのか?
気になって振り返りそうになった時、唐突に背後からの衝撃がソルを襲った。
「ぐえ!」
衝撃によってソルは前方に飛ばされてしまった。
よりにもよって敵であるジャンババンの居る砲口に飛ばされたので、焦ってすぐに立ち上がる。
「うええ、口の中に泥が・・・いったい何が・・・?」
慌ててジャンババンの方を見ると、衝撃はジャンババンも襲ったようで尻もちをついている。
謎の衝撃はメリーアンが何かをした結果の様だった。
その正体を知っていて、衝撃を受けながらもまともに行動できたのはシアリーズだけの様だった。
シアリーズはこの機に乗じて、ジャンババンに攻勢をかけていた。
「メリーアンさん!いったいこれは・・・?」
ソルはいったん退いてメリーアンの元へ向かった。
何が起きたのかをメリーアンの口から聞こうと思ったからだ。
「近づかないで下さい!」
ソルを見て、メリーアンはそう叫んだ。
少なからずショックを受けるソル。
一瞬、嫌われたのかと思ったが、冷静に考えたらそうではなかった。
メリーアンを見ると、何か光を放っている物を掲げているのが分かる。
そのまま見ているとそれは強く光り、再びあの衝撃がやって来た。
「ぐえっ!」
その衝撃はメリーアンの持つ光るアクセサリーのようなものを中心にして発せられているようだった。
アクセサリーの中心には大粒で黄金色の宝石がはめ込まれており、それが眩いばかりの光を放っている。
ソルがコーザの方を見ると、彼も遠くの方で衝撃をくらっているのが見えた。
しかし、ソルよりも遠くに居るコーザの方がその威力は少ないようだった。
(もしかして、近づけば衝撃は強くなる・・・?)
さきほどメリーアンがソルに近づかないように言ったのは、衝撃のダメージが増さないように忠告してくれたのだと分かった。
ソルはメリーアンの優しさを感じ、・・・少し嬉しくなった。
・・・嬉しくなっている場合ではない。と、気分を戦闘モードに戻すソル。
そして、妙案を思いついた。
メリーアンの持つ不思議な力の正体を知ったことで、思いついた作戦だ。
ソルはその作戦であの難敵ジャンババンを倒せると確信しつつ、その作戦を伝えるためにメリーアンの元へ走った。
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