第19話
ジャンババンの攻撃を避け続けていたシアリーズだったが、その額には沢山の汗が伝わっていた。
それは疲労と緊張感のためだった。
ソルと違って軽装のシアリーズは、ジャンババンの攻撃を受ければ一撃で致命的な傷を負うだろう。
そうならないためにシアリーズは、手にした突剣を巧みに使っていた。
シアリーズがジャンババンに斬りつけたとて、それは引っ掻いた程度の傷にしかならない。
しかし、ジャンババンの攻撃に合わせ、カウンター気味に刺突すれば、致命傷になりうる。
シアリーズはそうやって、ジャンババンに攻撃に集中できないように警戒心を煽るような攻撃を仕掛けていたのだ。
「称賛に値する腕前です。しかし、今はそれが忌まわしい。私には時間がないというのに・・・」
「僕の方は特にこの後予定など無いので、いくらでも付き合うぞ?そろそろ村の自警団が来る頃だ。ほら、遠くから大勢の足音が聞こえないか?」
「自警団などハッタリでしょう?それに何人来たところで・・・皆、蹴散らしてやります」
「・・・どうかな?ほら、少なくとも一人。助っ人が来てくれたぞ!」
それはソルだった。
それを見たジャンババンは少なからず驚いた。
「まだ立てたとは・・・」
ソルが戦いの構えを取ると、ジャンババンは自嘲気味に笑った。
「あなた方を過小評価していたようです。体こそ小さいが、あなた方は偉大です。私はあなた方よりも遥かに体の大きな敵と戦ってきましたが、これほど苦戦したのは初めてですから」
言い終えると、ジャンババンは改めて戦いの構えを取った。
今度こそ完全に全力で挑むという意気込みが見える。
「さあ、行きますよ・・・!」
その時、何かがジャンババンに向かって飛んできた。
「くらえ、猛毒の礫(つぶて)!」
その声と共に飛んできた何かはジャンババンのこめかみ辺りに当たって、地面に落ちた。
ジャンババンは「猛毒」という言葉に反応し、驚き、まず飛んできた方向を見た。
そこには木の陰に隠れたコーザが居た。
そして、次に地面を見た。飛んできたモノの正体を確かめようと思ったのだ。
・・・それは何の変哲もない木の実だった。
「なんと、くだらな・・・・・・・・・ぐふっ!!」
ソルの突進だった。
その「くだらない」子供の悪戯のようなものに気を取られた隙をついて、ソルは渾身の体当たりをジャンババンにくらわしたのだった。
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