第13話
翌朝、村の広場で項垂れるシアリーズ。
一晩中、メリーアンを探して駆け回り、それでも見つけられなかった。
疲れと焦りと、そして無力感で打ちのめされたシアリーズの姿はソルの目にも痛ましかった。
ソルも一緒に探し回ったが、痕跡すらなかったのだ。
遺体が見つからなかったのが、唯一の救いと言えたが、そんな事を言えば、シアリーズを更に傷つけるだろう。
「・・・どこかに連れ去られてしまったのだろうか」
シアリーズがそんなことを呟いた。
その呟きはソルの昨晩の記憶を揺れ動かした。
「そういえば、馬のひづめの音を聞いたような・・・この村には馬の獣人なんていないのに」
それを聞いたシアリーズは項垂れていた頭を勢いよく起こし、ソルの方を見た。
「本当ですか!?」
「ああ、でも、聞いただけだから、姿を見たわけではなく・・・」
ソルは自信なさげだったが、シアリーズは手に入れた唯一の手掛かりにすがるしかなかった。
「馬の獣人・・・まさか」
シアリーズは最初、襲撃は撃退した盗賊の報復ではないかと考えていた。
しかし、そうだとすると納得がいかないところもあったのだ。
それはシアリーズを襲った敵の太刀筋がきれい過ぎたという点だ。
盗賊などのものとは違う、訓練されたもののように感じたのだ。
そして、馬のひづめの音。
それはもしかすると、騎士のものかもしれない。
馬車を引いていた馬の獣人の騎士。
どこかに逃げたと思っていたが、そいつが戻って来たとしたら・・・。
襲撃にはラウシュ家が関わっているかもしれない。
心当たりは一つ。
メリーアンはラウシュ家の跡取りだ。
彼女が居なくなれば、彼女の叔父が後を継ぐことになる。
・・・跡目争い。
それが、シアリーズの頭に浮かんだ、一つの可能性だった。
「メリーアンを助けに行かなくては!」
シアリーズは勢いよく立ち上がり、そのせいで立ち眩みを起こした。
ソルが慌ててシアリーズを支える。
「・・・失礼。ソル殿、彼女の行き先に心当たりがあるのだ。僕はすぐにいかなければ」
「・・・すぐに?」
「ああ、すぐにだ。攫われたとしても暫しの猶予があるかもしれない。けれど、それは恐らく僅かだ」
シアリーズはよろよろと歩き出した。
その足取りは弱く、ソルは心配になる。
村は山の上にあり、街へ降りるには険しい道のりを行かなければならない。
とても、疲れ切った体で行くには危険な道だ。
「急いで山を降りなければ・・・」
ソルはシアリーズを止めるべきかと迷った。
下手をしたら、足を踏み外して崖の下に落ちて死んでしまうかもしれない。
躊躇っているうちにシアリーズとソルは村の入り口まで来てしまった。
「シア!私を置いてどこへ行くの!?」
その時だった、メリーアンがシアリーズを呼び止めたのだ。
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