第12話
ソルは夜中に目を覚ました。
母親の小言を聞きながら夕飯を食った後、久しぶりに自分の寝床で横になると、あっという間に眠りに落ちてしまった。
自覚がなかったが酷く疲れていたらしい。
盗賊たちと戦い、恋に落ち、慣れない会話をした。
疲れるのも当然だ。
そのせいか、夜中に目を覚まし、外がオレンジ色に見えたときは「寝すぎて次の日の夕方になったのか?」と思ったほどだった。
しかし、寝ぼけていた頭がはっきりすると、そんな愚かな考えはすぐに消え去った。
外から喧騒が聞こえ、何かが焦げた匂いがしたからだ。
「・・・火事!火事だ!燃えているのは・・・うち・・・?じゃない・・・」
慌てて外に出ると、そこかしこが燃えていた。
無差別に火をつけられたかのように。
「何をボサっとしてんの!火事だよ。消さなきゃ!」
ソルの母親も起きてきて、消火活動を手伝い始めた。
ソルもその後に続こうとしたが、ある考えがよぎった。
(もしかして、これは、あの盗賊たちの報復なんじゃ・・・?)
そう考えると、メリーアンたちが急に心配になって来た。
「母ちゃん!ここ頼む。俺・・・」
ソルがそう言うと、母親はじっとソルの目を見てから「どこに行く気か知らないけど、しっかりやんな!」と激励した。
その言葉でソルは迷いを吹っ切って走り出した。
メリーアンの乳母の家というのがどこなのか、ソルには良く分からなかったが、村はそれほど大きくはないので、走っていればすぐ着く筈だ。
ソルは走りながら、注意深くあたりを見渡す。
いたるところで混乱が起きていた。
村の家のいくつかが火事に見舞われ、皆、火消しに躍起になっている。
その時、ソルは妙な音を聞いたような気がした。
それは馬のひづめの音だった。村には馬の獣人は一人もいない。
ソルがそれに気付いたのは、誰もが火に気を取られている中、ソルだけが人探しをしていたからかもしれない。
とにかく、ソルにはメリーアンの居場所の心当たりが他に無かったし、やけにその音が気になったので、その音の方向に走った。
・・・その途中でソルはシアリーズに出会った。
シアリーズは家と家の間の、人気の少ない場所でうずくまっていた。
しかも、怪我をしているようだった。
「どうした・・・ですか?だ、大丈夫?メリーアンは?」
「・・・襲撃を受けた。メリーアンが危ない・・・ソル殿!どうか力を・・・」
「分かった!・・・けど、ど、どうすれば・・・」
「この先に・・・」
シアリーズが指さす方向には一軒の家が。
たぶん、メリーアンの乳母の家なのだろう。
ソルは覚悟を決めて、その家に飛び込んだ。
・・・しかし、どこにもメリーアンの姿はなかった。
ソルは外に飛び出し、シアリーズと二人で朝になるまで村中を駆け回ったが、メリーアンを見つけることは出来なかった。
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