第10話

ソルとコーザは気まずかった。

一念発起して村を飛び出したのに、すぐに戻る羽目になったためだ。

だが、安全な村まで来たのだから護衛の任務はこれで終わり、誰にも会わずに村を出れば、これ以上の気まずい思いはしなくて済むだろう。


「ありがとう。二人とも。とりあえずメリーアンの乳母の家を訪ねて、迎えが来るまでそこに居させてもらおうと思う」


シアリーズがそう言った。


「本当に感謝します。正式な謝礼はいつか必ず・・・」


メリーアンはそう言いながら、コーザに子袋を手渡した。

その中身を覗いたコーザは驚いた。

十分すぎる量のお金が入っていたからだ。

しかし、命の恩人に対する謝礼としては足りないと、メリーアンは考えているらしい。

今渡せるのはこれだけだが、更なる謝礼を払うという言葉にコーザは小躍りしそうになった。


「じゃあ、俺たちはこれで・・・」


ソルがそそくさと村を出ていこうとすると、シアリーズが驚いて言った。


「待ってくれ、二人ともこの村の者ではないのか?」


「あー、いやー、そうなんだけど、俺たちはこれから村を出て街で一旗あげようと思ってて・・・」


コーザがそう説明すると、シアリーズは納得して、

「そうだったのか。・・・では、落ち着いたらラウシュ家の館へ来てくれ。必ずだぞ」

と言った。


シアリーズはそう言いながらも何か言い足りない様子だ。

コーザはそれを察し、二の足を踏んでいる。

しかし、ソルはすぐにも村を離れたいと言わんばかりに足早に村の外へと向かっている。

仕方なくコーザはソルの後を追おうとした。


「ソル!」


その時、村の方から声がした。

その声を聞いたソルは足を止める。

その声はソルにはとても無視できるものではなかった。

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