第9話

これまでコーザは口下手なソルの代わりに受け答えをしてきた。

戦いはソルの役目で、それ以外は自分が受け持とうと思ったからだ。

しかし、嫌な予感がしたので、それを投げ出すことにした。


「ほら、ソル、聞かれてるぞ?お答えしなさい」


「ええ?」


ソルは口籠った。

答えは「いません」しか無いのだが、答えに戸惑ったのは、何でそんな事を聞くのか皆目見当がつかなかったからだ。

下手に答えようものなら、貴族の良く分からない面倒事に巻き込まれるような気がしたのだ。


しかし、いつまでも答えないわけにもいかない。


正直に答えるべきか、それとも誤魔化すべきか・・・。

「ええと、一応・・・」


ソルは肯定っぽく答えた。

はっきりと恋人がいるとは言っていないものの、その存在をほのめかす言い方だ。


「そうですか・・・いるに決まってますよね」

シアリーズはソルが狙った通りに解釈したようだ。


少し残念そうな顔を見せるシアリーズ。

その様子はソルをさらに混乱させた。

いくら考えてもソルにはシアリーズの質問も、その表情の意味も分からず、最後には考えるのを止めた。


しかし、コーザはシアリーズの浮かべた表情から、その感情を読み取った。


(え?シアリーズさん、ソルに惚れたの?盗賊をやっつけたから?)

(っていうか、シアリーズさんって女の子!?)

(・・・あ、女の子だ。男装しているから良く分からなかったけど、よく見たら女の子だ)


コーザはソルの方をチラッと見る。

ソルはどうやら気付いていないようだ。


(教えてやった方が良いだろうか・・・)

そう思ったが、コーザは余計な事をするのは止めた。

自分より先にソルに恋人が出来るのは気に入らなかったし、面倒事に巻き込まれそうな予感もあったからだ。

それに改めて見れば、シアリーズはどこからどう見ても女の子だ。

それに気付かない方がどうかしている。


(ソル・・・悪いな)


ソルはシアリーズよりもメリーアンの反応を気にしていた。

会話の流れで「恋人がいる」ということになって、ソルは「しまった」と思っていたのだ。

ソルはまだメリーアンの事を諦めきれていなかったのだ。


メリーアンはというと、そんなソルの苦悩など知ってか知らずかニコニコと微笑んでいた。


それぞれがそんな風にしているうちに4人は村に着いた。

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