第8話
馬車を引く者が逃げていなくなってしまったので、その場に置き去りにして、4人は歩き出した。
歩きながらお互いに自己紹介をする。
オコジョの令嬢は名をメリーアン・ラウシュと名乗った。
ラウシュ家はソルとコーザでもよく知っている貴族の名家だ。
そして、フェレットの剣士も続けて名乗りを上げた。
「僕はシアリーズ。親しい人はシアと呼ぶ。二人にもそう呼んでほしいな」
「お二人はどうしてこんな辺鄙な所へ・・・?」
コーザが最初の質問に選んだのはそれだった。
他にも色々と聞きたいことはあったが、身分が高い相手にあまり立ち入ったことを聞くのは気が引けたのだ。
「メリーアンの乳母だった者がこの先の村で暮らしていてね。その村に向かう途中だったんだ」
「ええ、もうすぐ彼女の誕生日なので、お祝いを持っていこうと思ったのだけれど、こんなことになるなんて・・・巻き込んでごめんなさいね。シア」
「いや、いいさ。むしろ、来て良かった。本当に」
次にコーザは二人の間柄について聞こうと思った。
てっきり二人は貴族の令嬢と、その家来かと思っていたのだが、やけに親しい話しぶりだったからだ。
コーザは二人は恋人同士なのかもしれないと思いつつ、質問を口にした。
「ところでお二人はどういう関係で・・・?あ、いや、別にその別に言いにくければ言わなくてもいいんですが」
その質問にシアリーズが応える。
コーザはどんな答えが飛び出すのかと、おどおどしていたが、シアは呆気なく答えた。
「別に変な関係ではないよ。遠い親戚で、幼馴染というだけさ」
「あ、そうなんですかい」
コーザが「ふう」と息をつき、ソルの方を恨めしそうにチラッと見た。
身分違いの相手と話すのは緊張する。
その苦労をソルにも手伝ってほしいものだが、ソルは知らん顔で黙々と歩いているばかりだ。
「今度はそちらの事も教えてくれるかな?」
シアリーズがそう切り出した。
その声に少しばかり緊張が混じっているようにコーザには聞こえた。
(なるほど、身分が下の者が相手でも初対面の相手と話すのは緊張するものな)とコーザは思った。
「ええ、何でも聞いてください。といっても、おれ達はしがない村人ですがね」
と、なるべく害がなさそうにコーザが応えると、シアリーズは食い気味に質問を投げかけてきた。
「・・・ソル殿は!恋人など、居るのだろうか!?」
「・・・へ?」
コーザの口から妙な音が漏れた。
ソルは相変わらず黙々と歩いている。
コーザは何だか面倒なことになる予感を感じ始めた。
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