第6話


「・・・!」


ソルは驚きと痛みで後ろに飛びのき、そのせいで馬車から落ちることになった。

けれど、一瞬ではあったが、馬車の中を見ることが出来た。


ソルが馬車から落ちるまでに見た、馬車の中の光景。

それは美しい白毛のオコジョの獣人。

そして、それを守るように片腕に抱き、細身の剣をソルに向かって突き出しているフェレットの獣人の姿だった。


オコジョの獣人は見たこともないような豪華できらびやかなドレスに身を包んでいて、まさに貴族の令嬢という感じだった。

そして、フェレットはまさにそれを守る剣士という姿だった。

しかも、美しく整った顔を持つ剣士だった。


ソルは決して不細工というわけではなかったが、美しいというよりは愛嬌のある顔だった。

しかし、人は自分にない物こそ羨む。

そして、ソルはそういった見た目の美しさが女性に受け入れられる条件だと思い込んでいたのだ。


想い人の幼馴染と一緒に歩いていた男も見た目が良かった。

いわゆるイケメンというやつだ。

失恋を乗り越え、せっかく新しい出会いをしたと思ったのに、その隣にはまたイケメンが・・・。

二度も続くと、これは呪いで、ソルは一生、愛を得ることが出来ないのではないか?という気がしてきた。


倒れたソルにコーザが駆け寄る。

そのソルの姿を見たコーザは驚いた。

ソルに刺さった剣先は、ほんのわずかだったが、それでも血を出していたからだ。

しかも、ソルは涙を流していた。


「どうした?ソル!」


「もういいんだ。コーザ。村に帰ろう。帰って・・・そうだなあ。鍛冶屋でもやろうかな」


「冗談じゃない。一生、鍋とか作って暮らすつもりかよ」


「他にも釘とか・・・」


「心配しているのは品ぞろえの事じゃないよ。ソル・・・」


二人がそんなやりとりをしていると、気まずそうな「・・・あのう」という声が聞こえてきた。

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