第5話
頭目が完全にのびてしまったので、盗賊たちは一目散に逃げていった。
盗賊たちが去った後、ソルがやるべきなのは馬車の中で怯えている麗しの女性に格好良く声を掛けることだった。
しかし、ソルは上手く出来るか自信が持てず、コーザにそれを頼んだのだった。
コーザは当然、それを断った。
助けたのはソルなのだから、ソルが声を掛けるのが当然だと思ったからだ。
「行けって。堂々としてればいいんだ」
コーザがそう言ったにも関わらずソルは勇気を出せずにいた。
盗賊の頭目をやっつけたときの心意気はどこへやらだ。
しかし、ソルにとっては、それはそれ、これはこれだった。
なんだったら盗賊たちと戦っている時の方が気が楽だった。
「あーあ、今頃、馬車の中で小さい女の子が怯えているだろうなあ」
コーザが唐突にそう言ったので、ソルは驚いてコーザの言葉に耳を傾けた。
「なんせ、盗賊に襲われたかと思えば、その後は、見知らぬ二人が外であーだこーだと言い争って。不安だろうなあ」
それを聞いたソルはコーザの言う通りだと思った。
見知らぬ女の子に声を掛けるのは確かに恐ろしいが、それよりも相手に不安を与えたままではいけないと思ったのだ。
それでようやくソルは決心がついた。
「コーザ」
ソルがそう言っただけで、コーザはソルが「俺が行く」と言っていると理解した。
「ああ、頑張れよ」
そう言ってコーザは不器用な幼馴染を送り出した。
そして、事の顛末を見守った。
馬車は横倒しになっているので、扉は上に向いている。
ソルは馬車によじ登って、扉を開けた。
「あ、あの、もう、安心・・・」
・・・ところでカピバラの鼻は前面に出ていて、割と大きい。
そして、二つの鼻の穴の間には結構な空きがある。
そこに剣が突き刺さった。
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