第3話
馬車が横倒しに倒れている。
本当ならそれを引く馬の獣人が居たはずだが、居ないところを見ると、どうやら逃げ出した後のようだ。
ソルにはその倒れた馬車が意味ありげに輝いて見えた。
自分の助けを待つ美しい女性が馬車の中で待っているような気がしたからだ。
「おい、変な気を起こすなよ?」
臆病なアライグマのコーザが、そっと忠告した。
もちろん、それはソルの耳には届いていない。
馬車に駆け寄る → 馬車の中の麗しい女性を助ける → 二人は出会い・・・ → そして恋が始まる → そして、あらゆる障害を切り抜けて遂に結ばれる。
そういう想像がソルの頭の中を駆け巡った。
コーザはソルがこれからする無謀な行動を心配し、止めようとわめき続けている。
もちろん、それはソルの耳には届いていない。
ソルの妄想には決定的な問題が抜け落ちている。
目の前の4人の盗賊だ。
「なんだ、おいつら・・・アライグマと・・・カピバラか?」
「どうするアニキ?ぼろい鎧だけど、貰っとく?」
「あれは・・・ちょっと金にはならなそうだな。鉄くずとしては売れそうだけどなあ」
盗賊たちがそんな「捕らぬ狸の皮算用」をし始め、その話題で盛り上がった時・・・盗賊の一人がはるか後方に吹っ飛んでいった。
ソルが体当たりをしたのだった。
カピバラの脚力は実はとても強靭だ。
しかも、ソルはそのカピバラの中でも怪力と名高い。
そんな彼がひたすらに重い鎧を着こんで全力で体当たりをしたのだから、ヤマイヌの盗賊はひとたまりもなかった。
「いやっほう!ソル!やっちまえ!お前は最強だ!」
さっきまでオロオロしていたばかりのコーザが歓声を上げた。
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