今も僕は星の煌めきに手を伸ばす⑥

 五月の下旬に差し掛かった日だった。

 担任の菅野先生がホームルームの時間に席替えを行うと言った。今の席は入学式の時のままで、廊下側の一番前から男子の出席順に座っていた。クラスの右半分が男子、左半分が女子という具合に別れている。ただ、僕のクラスは女子の方が男子よりも四人ほど多い。

 席替えの言葉を耳にして、たいてい後に座っている生徒から「えー」と不満を表現するような声が漏れる。

 そして、席替えは土曜日に行われることになった。

 菅野先生はくじを作り、黒板に席の配置を表す番号を書いていた。番号を書き終えると先生は言う。

「はい、じゃあ荒木と和田はじゃんけんなー。勝った方から順番にくじを引いて」

 じゃんけんは荒木が買った。負けた和田さんは他の生徒に責められるわけじゃなかったけど、彼女が一番最後にくじを引くことになるのは残念だなと思った。

 荒木が嬉しそうに教卓に置かれた箱からくじを引く。

「やったー、一番後ろだ」

 彼が引いたくじをみんなに見せびらかす。その数字は真ん中の列の最後尾だった。

 自席に戻った彼は一秒でも早く、全員がくじを引き終えないか傍から見てもソワソワしていた。廊下側の一番前の席から解放される喜びは理解できるが、少し目が悪い僕は後よりも前の方がいいなと思う。

 いよいよ僕の番となり、くじを引く。紙を開くと、九と書かれていた。自分の番号を探すと、予想に反して窓側の一番前だった。

 みんなが順々にくじを引き、いよいよ最後の和田さんに順番が回ってきた。

「残り物には福があるからな」

 菅野先生は慰めるのではなく、勇気付けるような口調だった。

 最後にくじを引いた和田さんは、窓側の一番後ろから一列右にずれて、後から三番目の席になった。まあまあ悪くない席だろう。

 全員の新しい席が決まり、一斉に荷物を持って移動を始める。

 僕の後の席は女子生徒だった。名前は覚えていないが、紀夫が可愛いと言った伊藤さんとよく一緒にいる女の子だ。真面目そうな子で、謙虚な感じの子だ。だから、僕とフレンドリーに話す状況はイメージできなかった。

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