第7話 武器売買阻止。その2

―― 12:00、『タカシ&アイリス』裕福なサメ船上――


 タカシたちは『裕福なサメ』に乗り込み、武器取引の場所である『リトルハロングベイ』へ向け北上していた。

 タカシは携帯端末スマホを取り出すと、再びジャミングアプリを起動して、に連絡する。


――レクター・レディントン――

 タカシの仕事仲間で、機械、電気・電子、情報工学の博士号を持ち、裏社会では伝説的レジェンドなハッカーであった。

 いまは、当時の仲間達と共にを営んでいる。……タカシが使用している携帯端末スマホの改造や、ジャミングシステムやハッキングツールなどといったアプリ類も彼の作品である。


 しばらくして、レクターに繋がる。


『おや?。……レクターおじさんに用事かな?』


「ちょっと、探し物を手伝ってほしんだが……」


 タカシは依頼のことを説明し、レクターに助言を乞う。


『……なるほど』


 レクターは携帯越しでキーボードを叩き何かを調べている。


『すまんが、時間が掛かりそうだ。……判ったら、かけ直す』


 そういってレクターは通話を切った。 



―― 13:30、『タカシ&アイリス』裕福なサメ船上――


 レクターから連絡があり、タカシはで通話する。


『――待たせたね。裏を取るのに時間が掛かったよ。……取引場所は送ったから、後で確認してくれ』


 タカシの携帯端末スマホに”ピコーン”と受信音が鳴る。


『……で。肝心の時間だが、深夜の2時頃のようだ。……まぁ、こっそり取引するには妥当な時間だな』


「ですね。」


 タカシもレクターの意見に賛成だ。


『……それと、取引には飛行艇が使われるようだ。――武器を受け取ったら、そのままとしゃれこむようだな』


 タカシは驚いた。……てっきり船を使うものと考えていたからだ。


『……だがまてよ。飛行艇は俺たちにも都合がいいんじゃないか?』


 タカシは、今回の阻止計画ミッションに変更を加えることを思いつく。


「ありがとう、レクター。……スムーズに計画か進みそうだ」


 タカシが礼をいうと、レクターが答える。


『ひとつ貸しだね。……あとこれはサービスだが。今日は朔月サクゲツの上に磁場の変調が発生している。――夜道に注意だぞ』


 レクターは情報を教えてくれた。


「わかったよ、レクター。帰り道に注意する。」


『いい子だ。相棒。』


 レクターはアドバイスを残して通話を切る。

 タカシは携帯端末スマホに送られてきた、取引場所の位置情報を『裕福なサメ』に転送すると、ブリッジのモニターの海図に取引場所が表示される。

――『リトルハロングベイ』から南に2キロほど離れた、小さい入り江(キャンパー達のたまり場でもある)から50メートルほど沖合の小島だ。――

 

 タカシは、アイリスとセリョーガに作戦を説明した。


フェーズ1)

 取引場所から1キロ離れた沖合で、タカシとアイリス(以下、潜入組)は下船して移動。近くの岩礁に隠れて飛行艇の到着を待つ。

 『裕福なサメ』は速やかに海域を離脱、その後はレーダーで飛行艇を捜索し連絡。


フェーズ2)

 潜入組は飛行艇が到着後、沖合から接近して取り付き、タイミングを計って飛行艇を乗っ取る。


フェーズ3)

 飛行艇ごと強奪し、島中央部『サンディ塩湖』にある農業用飛行場に向かい依頼主に引き渡す。


「キャプテンは顔に似合わず、大胆な作戦を考えるな」


 セリョーガはな顔で、タカシの作戦を評価する。


「……最初は、船ごと爆破しようと考えてたんだが、飛行艇が使えるんで変更した。」


 ――どうせなら飛行艇ごと奪って、エージェント・マンデーにほうが儲かるしね。――とタカシは悪びれもせず答える。


 セリョーガは苦笑交じりにタカシに質問する。


「……キャプテン。依頼主はその事を了承してるのかい?」


「それは、これから交渉するんだよ」


 タカシは片目をつぶって見せた。



――PM 2:10『タカシ&アイリス』裕福なサメ船上――


『――いきなり、買い取れと言われてもな……』


 携帯端末スマホからエージェント・マンデーのため息交じりの答えが返ってきた。

 タカシはエージェント・マンデーのため息を気にせず話を続ける。


「足のつかない武器が手に入るんだ、それも1個小隊分のね。――あんたなら、テロ屋共より有意義な使い方をしてくれるだろ?」


 エージェント・マンデーがしばし無言になる。……武器の使に心当たりはあるらしい。


『……はぁ、わかったよ、その話に乗ろう。……合流場所は『サンディ塩湖』の飛行場でいいんだな?』


「商談成立だな。いい買い物したと思うよ!」


 タカシは携帯端末スマホを切る。


「よし!話はついた。作戦開始だ!!」

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