第5話 休息。

―― 13:30、『タカシ&アイリス』ラプラタ国際空港 ――


 『ロビン&コリーの古物店』を後にしたタカシたちは、『ラプラタ国際空港』近く、ギリシャ料理が売りのダイナー『マルガリタリ』で遅めの昼食をとる事にした。


――マルガリタリ――

 ネオンサインに彩られたサイディングの外壁に、アール・デコの要素を取り入れた外観は、典型的な1940~50年代の合衆国ステイツ文化の気風が漂う。

 しかし、中に入るとイメージは一転、ギリシャ建築を思わせる人造大理石テラゾーのカウンターに白と紺青のチェック柄の床板。ターコイズブルーのグロスチェアーと白亜色のテーブルが清涼な印象を与えている。


 昼食時間ランチタイムが過ぎ、人気が少なくなった店内には、ゆったりした時間が流れていた。

 タカシとアイリスがボックス席に座ると、ウェイトレスが注文を取りにきた。


「羊肉のセットをください。」


 タカシはメニューを見ながらを注文する。


「……同じものを。」


 アイリスがメニューも見ずに注文する。


 しばらくして、ウェイトレスが食前酒を持ってきた。

 タカシは薬草酒の『ウーゾ』をショットグラスでっといただく。   

 アイリスもまねてっと『ウーゾ』を飲む。

 

 次に前菜メゼの『タラモサラタ』と付合せの『田舎ホリアティコパン』が出てくる。

 ……タラモサラタはボラの卵にニンニクとジャガイモをオリーブ油で練り合わせたモノで、ペースト状で塩味が強いから、付け合わせのパンですくって食べる。

 特にレモンとサワークリームのバランスが絶妙で、あまり生臭くないのがタカシの好みだ。


 タカシたちが、『タラモサラタ』をパンで、すくいすくい食べていると、白インゲン豆を使ったブイヨンベースのスープ『ファソラーダ』が出てきた。

 この店のスープは!!というほどの具材が入っていて実に食べ応えがある。……ちなみにオリーブオイルをかけるのが、ポイントである。


 滋養に満ちたスープで胃を温めると、いよいよ主菜アントレイの『スブラキ』と『ザジキ』がやってきた。

 ……『スブラキ』は羊肉にパプリカと玉ねぎを一緒に串焼きにしたのことで、『ザジキ』はヨーグルトとすりおろしキュウリを混ぜ合わせたである。

 『ザジキ』を『スブラキ』につけると、肉の脂っこさが抑えられるので、いくらでも食べられる。が、……ほどほどにしておこう。


 デザートは、焼き菓子の『バクラヴァ』だ。

 ……薄いフィロとを塗り重ねて層を作り、そこに刻んだナッツ類をのせ、その上にバターを練り込んだフィロを重ねて焼き上げる。

 最後に蜂蜜とシナモンを加えた濃厚なシロップをたっぷりかけて完成である。

 ……かなり激甘なので、タカシは濃いめのブラックコーヒーを頼んだ。


 こうして二人は2時間ほどかけて食事を楽しんで、帰路についた。

 

「アイリス。今日の料理は口にあったかな?」


 『環状1号線』を南下しながら、タカシはアイリスに今日の料理についての感想を聞いてみる。


「……ああいうモノが、美味しいと云うのでしょうか?」


 なんともあやふやな答えに、タカシはため息をつきそうになるのを堪える。


「そうだよ……。ゆっくり理解していこう。」


 ……かつての主人で創造主は、食についてはな人間で、アイリスは食事=栄養補給としか認識していない。

 タカシはそれが我慢ならず、アイリスに食べる楽しみと、味を覚えてもらうため、こうして連れまわしている。

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