第4話 回収業務。エピローグ

―― AM12:00、『タカシ&アイリス』ボイジャーズワーフ ――


 その後は海賊たちの襲撃もなく、南部の州都で島内最大の歓楽街を有する商業都市『ラプラタ』の南端にあるマリーナ『ボイジャーズワーフ』に入港する。

 タカシはお宝が詰まった防水バッグを肩に下げ、アイリスと一緒に『裕福なサメ』から下船し、そのまま駐車場に向かう。

 駐車場にはタカシの愛車、キャンディレッドの『コルベットC12カスタム』が待っていた。

 タカシは愛車のトランクを開け防水バッグを押し込むと、アイリスを助手席に乗せて駐車場を出る。

 ラジオからは、『DJ.EUROPA』の軽快なしゃべりと音楽に、V12特有の力強いエンジン音が合わさり、タカシの気分を最高に盛り上げてくれる。

 しかし、アイリスはこういう時に全く反応しないのが残念に感じる。


『―やっぱり、コンが無いせいなのかな……。』


 肯定なり否定なり、何らかのリアクションが欲しいな~と思うタカシである。


 『ボイジャーズワーフ』から島内を一周するハイウェイ『環状1号線』に乗り、1時間ほどかけて『ラプラタ』の買い手のもとへ向かう。

 ――タカシたちは以前、彼らの開店準備のために商品の仕入れを手伝った事があり、今でも回収品を買い取ってもらっている。


 タカシたちは『環状1号線』を降りて『ラプラタ国際空港』を通り、ダウンタウンのメインストリート『リケザ大通り』から『ラプラタビーチ』に向かって走っている。

 目的の店『ロビン&コリーの古物店』は『ラプラタビーチ』から2区画離れた『サンタクララ通り』の複合施設コンプレックス『ラセレサ』の隅っこにあった。



―― PM 1:00『タカシ&アイリス』ロビン&コリーの古物店 ――


 南部の州都『ラプラタ』のダウンタウンの一角『サンタクララ通り』に貴金属や宝飾品を扱う古物商を営んでいて、こっそり盗品等も扱っている。


 ちなみに『サンタクララ通り』はネオルネサンス様式を取り入れた町並みが特徴で、ブティックやジュエリーショップ、カフェ・バーなどが軒を連ねている。

 ……近代的だが、どことなくネオゴシック調な高層ビルが立ち並ぶ『リケザ大通り』とは対照的で面白い。


 タカシは愛車を『ラセレサ』前のパーキングエリアに止め、防水バッグを取りだすと肩に背負い、待っていたアイリスと一緒に店内に入る。

 ――ドアを開けると古風な呼び鈴が”チリン”と鳴り、奥から二人の男が現れた。

 片眼鏡モノクルをかけ、紫黒色の燕尾服テールコートにトップハット姿の小柄な男がで、葡萄茶色の丸眼鏡ロイドをかけ、黒緑色のスリーピースにボーラーハット姿のノッポ男はという。


『……相変わらずゴシックホラーに出てきそうな二人だな』


 店内の装飾も二人を反映したかのような凄みというか、うさん臭さ全開である。

 ただ、この雰囲気が好きといったお客さんも多いと聞くし、なにより良心的な価格は見た目に反した(失礼な話だが)で、店の評判はまずまずだそうだ。


「いらしゃいませ、タカシさん。アイリスさんも相変わらずお美しい……今日は商品の売込みですか?」


 値踏みするようにロビンが挨拶した。


「パラジウムのインゴット、30キロ分だ」


 タカシは肩に下げたカバンを降ろし、中身を見せる。


「ほぅ、これは中々。――いい仕事してますね。」


 中身を確認しながら査定担当のコリーが感心する。

 ……彼の目利きは鋭く、一瞬でモノの価値を見極められるそうだ。


「いいですねぇ。パラジウムは供給不足で、引く手あまたですよ。」


 ロビンがコリーの後ろからバッグをのぞき込みながら答えた。


「じゃぁ、買取OKだな?」


「はい。よろこんで買い取りましょう。……30キロで213万ドルで如何ですかねぇ」


「よし。取引成立だな。」


 タカシは予定より高い買取価格だったので即決した。


『……買い叩きをしないところが、誠実な証拠だな。』


 タカシは、伝聞が偽りでないことを実感する。


「それでは、タカシさん。……しばしお待ちください。」


 ロビンは携帯端末スマホを操作し、タカシの口座に入金する。


「……今振り込みましたので、ご確認ください。」


 タカシは携帯端末スマホを取り出し、自分の口座に振り込まれたのを確認する。


「……確かに、振り込みを確認した。」


 タカシはアクセサリーを見ていたアイリスを呼び、一緒に店を出る。


「またのご来店をお待ちしております。……たまには、何か買って下さいね。」


 ロビンは一礼して、タカシたちを見送った。

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