第3話 回収業務。その2

―― AM10:00、『タカシ&アイリス』裕福なサメ船上 ――


 タカシはグラサンを外し、アイリスと一緒に後ろを見ると、3艇の高速ボートが近づいていた。

 ――超視力を持つ2人には、接近する高速ボートが手に取るように分かった。

 4人乗りのインフレータブルタイプの高速ボートが3艇で、うち1艇には.50口径の重機関銃が据え付けられ、3人が乗り込んでいる。

 残りは4人づつ乗り込み、全員がアサルトライフルで武装している。……どう見ても海賊である。


 ――タカシたちのような回収業者や密売人がいるのだから、それを襲うのは警察やマフィアだけとは限らないのだ。――


「――アイリス。撃退するぞ!」


 2人は船内に戻り、それぞれ武器を持ってくる。

 タカシはフルオートショットガンを持って船尾に向かい、船体に張り付くように身を隠す。

 アイリスはスナイパーライフルを抱えて船橋の屋根に昇り、胡坐をかき両腕をクロスした座り込みの姿勢で構える。

 セリョーガは船を巧みに操りつつ船体の振動を最小限に抑え、見事な操船技術を見せていた。


 それでも『裕福なサメ』より遥かに優速な海賊ボートたちはぐんぐん接近してくる。

 その距離1キロ。……最初に動いたのはアイリスだ!

 アイリスは不安定な船上にもかかわらず、銃座付きの海賊ボート1に向けて発砲。 

 上顎から上を吹き飛ばされた機銃手が海に落ちる。――まずは脅威度の高い標的から潰す。


「!!」


 海賊ボート達は慌ててジグザクに動き、アイリスの狙撃を避けようと試みる。

 アイリスは淡々と上下左右に揺れる目標を捉え続け、一呼吸をおいて引き金を絞る。

 今度は操舵手の頭が吹き飛び、割れたスイカの如く中身を周囲にまき散らし崩れ落ちる。……コントロールを失った海賊ボート1はスピードを落とす。


「クソが!!」


 残った海賊ボート2・3はアイリスに向けアサルトライフルで、お返しする。

 アイリスの周囲に銃弾が刺さる!


「――ッ!」


 さすがのアイリスも、これ以上は狙撃を続けることが出来ず後ろに下がる。

 この隙に海賊ボート2・3は一気に距離を詰め、『裕福なサメ』から10メートルまで近づいた。

 ここで、船尾に隠れていたタカシが身を乗り出し12番ゲージの粘着榴弾HESHをフルオートで叩き込む!!

 海賊ボート3が爆発炎上し、海賊たちは火だるまになりながら海に放り出される。

 タカシは構えを崩さずに流れるような銃さばきで、海賊ボート2に銃口を向ける。

 再び粘着榴弾HESHを打ち込み、海賊もろとも爆散させ、魚の餌にした。

 体勢を立て直して、追いかけて来た海賊ボート1は、状況の不利を悟ると追撃をあきらめ、投げ出された仲間の救助を始めた。


「……これで、連中も襲ってこないだろう。アイリス、セリョーガお疲れさま。」


 タカシは銃をしまうと、再びソファーに腰を下ろし2人を労う。


「労いの言葉、有難うございます。タカシさま。」


 戻ってきたアイリスは、タカシのグラスにラム酒を注ぎ、反対側のソファーに座る。


「さすが、キャプテン!……海賊のあしらい方も手慣れてきたな。」


 操舵室からセリョーガの声が聞こえた。


 タカシたちを乗せた『裕福なサメ』は、母港に使っている南部の町『ボイジャーズ・ワーフ』をめざす。

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