れっつねごしえいしょ……ん? ※乙喜実視点

「というわけだキミよ。噛まないから吸わせろ」

「い、い、いいい、いい、嫌ですよ!」

 かれこれ何十分このやりとりさせるんですかっ。顔近いッス顔。とってもお綺麗で眼福ではありますがそれ以上に圧が凄いんすよ圧が。

 ご飯食べ終わるの待ってくれて、力ずくじゃないのだけは感謝致しますけども。

「少しずつキミがなじんで来たからわかるぞ。ジョーホというやつだろう? 喰わんでやるから舐めさせろ吸わせろ啜らせろ、だ」

「だから嫌ですって……!」

 ドヤ顔鬱陶しいなもう。

 確かにあんな痛い思いと比べたら譲歩でしょうとも。でも私にとっては痛みのほうで余裕できたぶん精神的苦痛が増すだけだと思うんです?

 そら綺麗な人に舐められたり? 吸われたりするのは? 業界的にご褒美かもしれません? ですが? それが? つい数時間前に命のやりとりした相手で? しかも一回ベロの表面喰われた? 削がれた? とにかくボロボロにされてたら? ふっつーに怖いわけで?

 つまり、私としては接触全般嫌なんです。

「チッ。じゃあ私も貴様に協力してやらんぞっ」

「協……力……?」

 とは? なにに?

「ここでは異界から連れてきたヤツに色々とやらせるのだろう? これは……見世物か? 未だボヤボヤしててわかりづらいが、私を見世物にせねば困るのだろう?」

 見世物見世物言わないでくださいよ。演習試合のこと言ってるんでしょうけど、人聞きが悪いです。間違っちゃいませんけど。

 あと、グロテスクな光景が浮かぶのでやめてください。さっき食べたのり弁吐きそうです。うっぷ。

「だから私に貴様のなにかしらを提供しないならぼいことーだ! クハハ! こーしょーできてるだろこーしょー! キミよ、許そう。私を褒めてもいいぞ。そしてお姉様に報告するが良い! クハハ!」

「…………」

 発音間違ってるし自分のこと聡明とでも思ってるんですか? ちくしょう。今のドヤ顔からの姉に褒められる妄想面からの内容のアホさも相まってちょっと可愛いと思ってしまった。深〜く不覚。

 っていうか非協力的ならむしろそっちのが私的には嬉しいかもしれないっていうのがあると言いますか。

「さぁ! どうするキミよ!」

「…………じゃあ」

「ウム!」

「協力しない方向で」

「ム?」

 これでわんちゃん退学とかもあり得るし。契約者がワールドエンドかつ非協力的だからーって。そうなったら私も実家に帰れるし……あれ? 一番良い方向に転ぶのでは?

「そ、それじゃあそういうことで……わ、私はお風呂に入りますんでお相手できません。またなにかあればお呼びしますし、一度帰っていただいても大丈夫です。はい」

「あ、アレ? なんか違うぞキミよ」

 オロオロし始めた。ってことは非協力的な姿勢はブラフ寄りの発言だったのかな? このまま退けなくなってくれると嬉しいなぁ〜。あ〜でもリリンさんが流石に止めそうだな〜。余計なことしないでくれると嬉しいなぁ〜。ダメだろうな〜。

 はぁ……。とりあえずお風呂入って落ち着こ。っていうか今日はもう休みたいから思考停止のためにゆったりしよ。

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