そ、それはちょっとえちぃです……って、さらに超えてくるのやめてもらえませんか!? ※乙喜実視点
「もぐもぐ……」
「…………」
「もぐもぐ……」
「…………」
「もぐ……もぐ……」
き、気まずい……。
いつも家族一緒にかひとりで黙々と食べてる身としては見られながらは凄まじく気まずい……。
別に私が悪いわけじゃないんだけど、リリアンさんが買わないって選択をしたわけだし。でも……なんか……こう……うぅ〜ん……。気まずい以外の表現が見つからないっ。
「なぁ、キミよ」
「ぅっぷ!? けっほっ。……は、はい。な、なんでしょ?」
きゅ、急に話しかけてきてびっくりしたけど、文句を言う度胸など私にあるわけもなく。前向きに捉えるなら会話によって気まずさがなくなるよねって考えるようにする処世術をばここで展開させるでござい。
っていうか少しでもこんな風に考えてないとこっちの胃がストレスでやられるだけだもん。選択肢なんてないも同然だよこんなの。
「それ、うまいか?」
「へ?」
「それ、うまいか?」
「え〜っと〜……」
「まずいならよこせ」
急に食べたくなった? お腹減ってるならさっき買えば良かったのにと思わなくもないけど。この人の場合ただの興味のが大きそう。年単位で食事しなくても生きてられる生物だし。
「いえ、美味しいですけど……」
「気になるな。よこせ」
結局ですか……。じゃあ最初から寄越せだけでいいじゃないですか……。わがままだなぁ〜もう。
「…………」
……とはいえ、どうしたものかなこれ。私、一個ずつじゃなくて全部バランスよくちまちま食べるタイプだから、全部食べかけなんだよね。
食べかけを渡すのはそもそも抵抗あるんだけど……怒られない?
「チッ。焦らすとはいい度胸だ」
「ちょっ!? あっ!」
指伸びてきた!? 怖い! よくよく見ると伸び方が第二関節付近だけ伸びてて不気味! 怖さ三割増し!
って、おかずじゃなくて狙いは私の手首ですか!? なんで!!?
「あ〜〜〜〜〜んむ」
ぎゃー!? 割り箸ごと食べてるぅ!? ミッシミシいってるぅ! 手から振動が伝ってくるぅ! 生々しい感触が響いてくるよぉ……! 怖ぇよぉ〜!
「んむんむ……ん〜」
は!? 離した! 退避!
あぁ〜……割り箸の先が時間が経って毛羽立った松ぼっくりのように……。
いやトゲトゲしさはくっつきむしっぽいかも。時間が経って黒くなったほうの。
っていうかどんな噛み方したらこうなるだろ? 恐ろしや……。
「ん〜」
あ、あれ? ん〜ん〜うなってモゴモゴしてる……? そんな味わうようなものでもないような? ただの魚のフライですよ? まぁ私は好きですけど。
「い、いかがでしたでしょうか?」
できればお気に召さないと嬉しいんですけど。私の晩ごはんなのでこれ。
「うまい」
「そ、そですか……」
とっても残念です。
「キミの味がしてうまい」
「…………んん〜〜〜〜〜〜???」
い、一瞬なにを仰りやがってるのかわからなかったけど。一瞬が過ぎてもまだわからない……。
わ、私の味? どこにそんな――。
「…………あ」
食べかけの部分と、割り箸の先についたヨダレか!
ちょ、ちょっとそれを私の味っていうのは……間違ってないけど……なんかこう……えちぃ……。
「しかしキミの味がするからうまいな。食い物のほうはむしろ味の邪魔をしている。よくないな」
ヨダレ単体のが良いってそれもうえちぃというか変態ッスね……。まぁアナタの場合そういう生き物だから仕方ないんでしょうけど。
「だが良いことがわかったぞキミ!」
「ひゃ、ひゃい! な、なんでございましょう……?」
急に大声張り上げないでほしいんですけどそれはそれとしてその嬉々とした顔はなんでしょうか? とっても気になります。嫌な予感がするんで。
「血肉を喰われるのはイヤだろう? キミよ」
「それはそうです」
好むのは余程の変態か、けったいな変態です。それかただの変態。
「しかし今ツバでもそれなりの満足感が得られたのだ! すなわち――体液なら割となんでもいいのかもしれない!」
「んんんんんんん……」
頭を抱えざるを得ない……。いったい私はそれを聞いてどう反応すれば良いんですか?
「つまり! 喰わずとも吸うなり舐めるに留めれば良い! それなら痛みはあるまい?」
あぁぁあぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁああ…………。そういうことかぁぁぁああああぁぁぁああああああ…………。
あ……ぅう……あ、もう! ああぁあああ! もう! ぶっ飛びすぎてて思考がまとまらないってぇ!!!
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