食事をしたいんです。なりたいわけじゃない ※乙喜実視点
「あ〜……そういえばなんですけ……ど……」
「ん?」
思ったより月々に支給される額が多かったからつい手を伸ばしちゃって、気づいたら今晩と明日の朝のお弁当とお菓子合わせて袋二つぶんも買っちゃった。安心安定の幕の内。優柔不断のお供。
そんな私の横で。
「結局なにも買いませんでしたね。私はおやつまで買っちゃいましたけど」
「ん〜」
リリアンさんは特別に端末を支給されたらしいし、入ってる額も私のより多いとは本人の口から聞いたけど……。だったらなんで買わなかったんだろ?
「その……買い方がわからなかったとか……ですか……ね?」
誇張表現をすれば、文明に驚く原始人。ちょっとマイルドにすれば中世のお嬢様が現代にやってきた的な人だからそれでも不思議ではないんだけど。
でもたどたどしいけど残高確認したりはできてるし、違うとは思いつつも質問してみたはいいものの……。
「ん〜」
唸るだけで返事がなかなか返ってこない……。
結構キビキビ話す人だから言葉に詰まるのちょっと意外かも。
「買い方? は、わかる」
あ、なんかまとまったみたい。
「あれだろ。これに書いてある分をモノにできるのだろ? 人畜生が似たようなことをしてるのを見たことあるからな。そのくらいはすぐにわかったぞ」
あ〜……確かに記憶の隅にちょろっとあったかも……。
基本この人たちって欲しければ奪うか貢がせるっつー超大昔のどこぞの国の貴族みたいなことしてるから通貨って概念ないものだと思ってた。
「たしかにあそこにはそれなりに興味ひかれるモノはあった。あったがな……」
「はぁ……。なら……どうして……?」
「それは貴様」
「……はい」
「…………」
「…………あ、私がなんです?」
「貴様のあの味の余韻が残ってて他で穢したくない」
「そ……れは……」
また答えづらいことを……。
でも、そっか。そんな内容なら確かに言いづらいよね……。納得。
納得? いやいや、この人がそんな性格してる? そんなわきゃない。
「あの小さいのも美味そうだったしな。他が目に入らなくなってしまった」
「そ、そうなんですかぁ〜」
やっぱり。別に顔赤くしたり気まずそうにしてるわけじゃない。
なら……なんで?
「……フム。やっぱりか」
「え。な、なにがでしょ?」
「貴様、今、さっきよりも私を恐れたな?」
「あ、え、えっと……」
綺麗なお顔が近づくのは良いけど……そのセクシーな唇は正直怖いッス……。
「だから迷った。お姉様は貴様と仲良くしていて、きっと私にも望んでいる」
「あ」
そ、そういうことだったんですか。私と仲良くするのに邪魔な内容だから迷ったと。
な、なんだ。思ってたより刹那的な人じゃないのかな? ちゃんと考えることもあるんだ。ちょっと嬉しい発見かもしれない。
「取って食うにもいかず。少し切り取ってちまちま食うのもたぶんお姉様はダメって言いそうだから難しい。しかし仲良くなると色々と融通が効くのは知ってる。貴様と仲良くなればかじっても良いと言う日がくるかもしれない。なのに貴様が余計なことを聞くから仲良くなれないかもしれないじゃないかどうしてくれる」
「え、えっと〜……す、すみません?」
今言ったことを胸に秘めてれば少なくとも仲良くなるのにそうは時間かからなかったと思いますよ!?
え、私が食事を選んでる間にそんなこと考えてたんですか!?
わかってると思いますが望んで被捕食者になりたい人間なんていませんからね!!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます