なんでしょうね。本来驚くべきだと思うんですが……。命に関わらなきゃ特別驚かなくても良いんじゃないかなって ※乙喜実視点
「早く歩けキミ。うっとうしい光の所為で気分が悪い」
「は、はい〜」
私はアナタからのストレスで胃に穴があきそうですよ……。
近くにいるだけで怖いのに、そう話しかけられたら余計に……うぅ……。晩ごはんは軽いのにしよ。最悪食べなくていいかなもう……。
「キミ、あれか?」
「あ、は、はい……」
スーパーみたいなとこやでっかい食堂もあるのにこんな小さなコンビニみたいな売店まであるって、本当どういうお金の使い方してるんだろうって思う。
まぁ、私的には助かりますけども。人混み得意じゃないし。
では、いざ晩ごはんを買いに参らん。
「し、失礼しまぁ〜すぅ……」
「スンスン……。ほほう。なかなか鼻に良い匂いだ」
鼻にって必要でした? その台詞。
入れることによってむしろ変になってません? 大丈夫です?
「おや、いらっしゃい。新入生だね」
「!!?」
ど、どこから声が!?
わ、私そこそこ神経過敏というかそこそこ鋭いほうなのにまったくわからなかった……っ。
「……フム、小さいな」
「へ? ――あ」
キョロキョロしてたら棚の陰から……ぬいぐるみが歩いてきた。
あれは……虎かな? ずいぶん可愛らしい。可愛らしいけど。
「最近生徒がたくさん減っちゃって閑古鳥が鳴いてたところでね。新入生が早速来てくれて嬉しいよ」
声はめちゃくそダンディ……。でも立ち振舞いが堂に入っててギャップでバグるってほどでもないかな。すごく自然体。
きっと、そういう生き物なんでしょう。大方先生のうちの誰かの契約者か、政府から派遣とか、異界からの移住者ってとこかな。そういう話は知らないけど、秘密裏にあってもおかしくないし。
と、その前に返事。と、ついでに……。
「あ、そ、そですか……。なら……えっと……幸いです……」
急遽始まりました世間話の合間に隙間からチラっと……あ、駄目だ視えない。じゃああんまり深く突っ込んじゃいけないひ……………………
この方はリリンさんやそれに類する程度にヤバい生物。殺意を持たれない限りは当たり障りのない関係で行こう。
「貴様、よく隠しているが私にはわかるぞ。ちゃんと意識すればずいぶんと美味そうだ」
「ちょ!!?」
じゅるり……じゃないんだわ!?
人が無難に接しようと決めたそばからなにしてるんですか!?
「ハッハッハ。威勢が良いね。お姉さんのほうも最初来たときははしゃいでいたけど、君はちょっと方向性が違うね?」
「お姉様? お姉様もよくここに?」
「あぁ、よく買いに来るよ。たまに仕入れも頼まれてる。お陰で暇しなくて済んでるよ。ありがたいね」
「……貴様を食うのはやめといてやる」
「それはどうもありがとう。じゃ、ごゆっくり」
「…………ふぅ」
よ、良かった! 大人かつ冷静かつ的確な対応で大助かり!
もしもおっぱじまった日には絶対リリアンさんのほうが殺られちゃうし、近くにいる私も巻き添えくっちゃうもん。
はぁ……本当に良かった……。
向こうの見た目とかよりこっちのが心臓に悪い。というか命に関わらなきゃ見た目とか生態とか正直どうでもいいかもしれない。
私、初日から成長してるかも?
「キミ、さっさとしろ」
「あ、は、はい」
そうだ。晩ごはん選ばなきゃ。
そして部屋に戻ったらすぐに食事済ませて風呂入って寝るんだい。
……ハードルはあと二つ。
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