常識が通じない恐怖って存在するんだなって ※乙喜実視点

「リリンさんが言ってたから疑ってはいなかったけど、実際見ると驚くわね。本当にすぐ治っちゃってまぁ」

「あは、あははは……」

 驚いてるって言ってるけど、それで済んじゃうあたりリリンさんって影響力あるんだなー。

 まぁ、世界的な危険生物って扱いだからそら影響力あるか。愚問。

「じゃ、これ学園支給の端末ね。地図とかもすぐ開けるようになってるから迷わないと思うよ。ナビついてるし」

「あ、はい。ありがとうございます」

「じゃ、お大事にね」

「はい……ってあれ?」

 リリアンさんがまたどっか行っちゃった。今度こそ帰った?

「終わったか? じゃあ行くぞ」

「うわぁあ!!?」

「やかましいぞキミ」

「す、すみません……。で、でも急にどっか行ったり現れたりするから……」

 でもどこ行ってたか今のでわかった。

 こ、このヒト……体薄くしてベッドの下に潜り込んでたんだ。

 ほ、骨までそんな柔らかく……いや、そもそも骨の概念がないのかも。ある種タコと思っといたほうがいいかもしんない。

「っていうか、なんでベッドの下に? それにキミって……」

「この手の光は落ち着かん。明るいだけで他になにもないのが気色悪い。お姉様は慣れろとおっしゃっていたから我慢はするが、それでも嫌は嫌だ」

 あ〜。人工光が嫌なんだ。紫外線がないとみたいな? 夜でも夜空で光る星は太陽と同じ恒星なわけだし。あっちでは星か火の明かりだけみたいだし。新しい環境でストレスなのかな。

 ……リリンさんも最初の頃はそうだったりして。

「呼び方はお姉様がそう呼んでたから。ほら答えてやったぞ。これぞこみゅにけいしょにんぐだ。お姉様が貴様とは仲良くしろと言っていたからな。よくできているだろう? お姉様には良かったと伝えろよ」

「は、はい……」

 こみゅにけいしょにんぐとは? コミュニケーションって言いたかったのかな? それの……進行形? みたいな?

 そういえば契約者とはある程度知識の共有とかもするとかなんとかうつらうつら。

「それはそれとして早く行くぞ。ここは嫌な光が過ぎる」

「は、はい」

 って、言ってますがね。大体の場所はこんなもんですよ。

 自室なら……まぁ私は視力良いし悪くならないからつけなくてもいいけど。

「モタモタするな! ええいもういい私が運ぶ! 道はどっちだ!?」

「え、ちょ、自分で――ってなんですかその固めた拳!? 壁壊す気ですか!?」

「そうだが?」

 なにさも当たり前のように言ってんすか!? 自宅にも扉あったでしょうし医務室に入る時も通ったでしょうが!?

「というより、考えていなかったな。壊すも通るも私次第だろう?」

 傍若無人過ぎる……!

 いったいどんな教育受けて来たんでしょうねぇこの方!

「で、でも……お、怒られますよ? リリンさんに」

「ム。本当……か?」

「わからないですけど、こっちに馴染めみたいなこと言われてるならほぼほぼ」

「ムゥ……。お姉様のことをわかったような口を叩くのは気に入らんが……友人たいとうと言っていたから……ウム。聞いてやるか。なにより人畜生にしてはよくやるし。お姉様の侍女よりも悪くないしな」

 な、なんかよくわからないけど 意外に素直に聞いてくれるな……。評価もそれなりにしてくれてるような気もする。

 とはいえ、先が思いやられるのは変わらない……なぁ〜。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る