それは客観的にみれば希望と呼べるだろうが、主観を言えば絶望的と言わざるを得ない ※乙喜実視点
「…………あ、れ……?」
知らない天井……なんてベタな……。
えっと……私……たしか……。
そ、そうだ!
変なヒトが来ちゃって、
……でも、私、生きてる。怪我もない。痛いところは……特にない。
あのヒトも……いない。帰ったのかな? それか……。
「まさか全部夢なんてこと――」
「あるわけないだろう。アホな人畜生め」
「え――んぎゃああああああああああああああああ!!!?!!?!?!?!?!??!!?」
おりゅうううううううう!? どっから湧いて出たぁ!!?
「ど、どど、どどど!?」
「フン。言葉すら失ったかアホ畜生め」
「…………」
人が消えてしまった。うろたえただけなのに酷い。
いや、そもそも初対面であんなことするようなヒトだし。言葉だけで済んでるならマシ……なのかな?
「なにを見ている。不愉快だぞ」
「す、すみません……」
不機嫌そうな顔……でも襲ってくる様子は今のところない……かな……?
って、あれ? そういえば視えな……あ、眼鏡かけられてる……。そりゃ視えないよ。
とりあえず何があったか探ってみよう。
ほわんほわんほわんほわわぁ〜ん。
* * *
これは……なんだろう? 黒い……塊?
位置的に……このヒトの……リリアンさんのいたところみたい。
「フム」
あ、リリンさんの影か。あんまりにも大きくてわからなかった。
それよりも助けに来てくれてたんですね。来るならもっと早くても良かったと思いますありがとうございます。
あれ? っていうかなんでこんな第三視点で視れてるんだろ? はじめて……変な感覚。
――パッ
あ、消え――おえ、肉塊? ぐ、グロ……。
「中まではやってないんだ。さっさと戻れ愚妹」
さっさと戻れってあんな肉も骨も内臓もグチャグチャなのに……いや、できるのは知ってますけども。やっぱり価値観というか、生物として違うところにいるんだなぁ。
「お、おまたせしました」
本当に秒で戻るんだもの。イミガワカラナイヨ。
あ、でも服がところどころ変わってるっていうか破けてる? って、よく見たら体と一体化してる……体の一部だったんだ……集中しすぎてて今気付いた……。
「さて、言いつけを破って殺そうとしたな貴様?」
「あ、え、う……」
「言い訳はあるか? してみるか? ん?」
「も、もうしわけごじゃいましぇん……」
平伏……上下関係はキッチリしてるんだ。
「なんだしないのかつまらん。まぁ良い。とりあえず……」
あ、私に近づいてくる。な、なにするつもりですかリリンさん。
「口の中……くらいか。他は……筋肉が多少傷ついてるが、勝手に治り始めてるし、
そう……ですね。多分口以外はやられて…………って! なんで口に舌を!!?
「悪いなキミ。これが手っ取り早い」
――ブチッ!
ああああああああああああああああああ!? 私の
な、なにしてくれますのんこの人!!?
「あとはほっとけば治るだろ。リリアン、キミを持って出ていけ。少し行けば医務室がある。あぁ、誰かしらいるから案内させればいい。わかっていると思うが殺すなよ。大人しくしておけ」
「は、はい……。わかりました」
いやぁあ! 渡さないでぇ! 過去だとわかっていても願わざるを得ないってぇ! このヒトと一緒はイヤぁ! もう遅いけどぉ!
「あぁ、それと。目が覚めたら寮に直接向かうと良い。起きる頃には新入生への説明もクラス分けも終わってる。端末も医務員が持ってくるだろ。というかそうさせる。今日は他にすることもないだろうから、部屋についたら明日からの予定が端末にメールが送られるだろう。その通りにすれば問題ない。荷物に関しては一応最低限のは用意してるだろうが、大きなのは次の休日にやれ。そもそも大体揃ってるから生活に問題もないしな」
「……?」
「貴様はわからんで良い。言えば伝わる。もう良いから行け」
「わ、わかりました……」
「あぁ。…………合格おめでとう」
ゾクッ! っとしたぁ!
こ、これ……わかってる?
リリンさんこれわかってますよねぇ!?
だ、だからわざわざ説明を……それから絶望的なことまで……。
確かにおめでとうでしょうよ。新入生おめでとう。これから新たな生活に希望を抱いてさぁがんばろうってことでしょうよ。
でもですね?
合格っていうのは私にとって絶望でしかないんですよぉ!!?
わかってて言いましたよね!?
ニタァってしてましたもんね!?
ね!
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