そしてプロローグの続き…… ※乙喜実視点
「んぁあ〜む」
「んんんんんんんんんんんんん!!!?!?!?!?!?!!!??!?!!?」
きゅ、急に唇を奪われ――。
「んんっ!?!?!??」
痛いッ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
し、舌がッ!
舌がなにかにっ! 小さいなにかに食われてる!?
「ん、んふぅ……! んん……!」
く、口の端から血が垂れてるのがわかるっ。痛いよぉ……っ。助けてっ! 誰か助けて!
「んぱぁ……。んん〜! うんまぁい♪ 貴様、いい味してるなぁ?」
「ん、んん、んぅ……」
す、すごくいやらしい顔してる……。こ、こっちは舌の表面がズタボロでずっと血が垂れ流しだし。痛くて涙は出ても泣き叫べないっていうのに……っ。
で、でも口離してもらえて、周りを見る余裕も――。
「…………!?」
あ、あ、あ、あぁ……。だ、駄目だ……。先生たち皆萎縮しちゃってる……。
あーだこーだ声は聞こえるけど、助けるつもり全然ないや……。
この人も、さっきのは味見って言ってたから、今ので終わりだなんて思えない。
どうしよう……。
どうしようどうしようどうしよう。
こ、このままじゃ私……。
「ん〜。お姉様からは殺すなと言われていたけれど」
殺す? やっぱりこの人は私を……。
「もう少しくらい……いいかぁ♪ 一口かじったら我慢できなくなっちゃったし」
私を食い殺す気だ。
め、明確な殺意をうんたらって漫画やアニメであるけれど。
虫けらを見るような目でとかっていうのもよく聞くけれど。
捕食者と被捕食者の関係とかもよく見るけれど。
正直、いまいちピンと来たことなかったんだけれど。
今、ちょっとだけわかった気がする。
このやらなきゃやられるって状況で。ようやく共感できた気がする。
でも、さ。生温いよ。そんな表現。
実際一口食われてから言ってよ……。食われなきゃ実感できないよ捕食者なんだって。
あ〜……血流しすぎたせいかな? 誰に文句抱いてんだろ。今は、そんなことしてる場合じゃないのに。
あぁ〜痛い。痛くて頭回らない。
最近運がなさ過ぎるよ。あ〜せめて瞬さんが同じ演習場での試験なら助けに入ってくれたのかな? なんで別なんだよ。ついてないにもほどがあるよ。
あ〜もうクッソ。
今、私がすべきことって、さ。文句とか。助けを乞うとか。運命を呪うとかじゃなくて、さ。
死なないように、打開することだって。思うんだよね。
あ〜そう。そうだよ。私は今近づいてくるこの綺麗な顔を。血が混じった唾液で糸引いてる大口を。どーにかこーにかかわして、それから……えっと……それから……。
「…………!?」
あ〜そう。そうそう。助かりたいから。助からなきゃだから。助かるために、私は。
「――貴様、よくも私の顔を剥いだな? 人畜生の分際でぇ!!!」
この人から逃げなきゃ。
――殺してでも
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