二度あることは三度あると言いますが、入学試験当日に起こらなくても……いや、今だからこそか ※乙喜実視点

「はぁ……」

 わかりきってた未来とはいえ。憂鬱にならない理由にはならないというか……。本日とうとう来てほしくない試験の日が来てしまった……。あと十分も歩けば敷地に入っちゃうよぉ……っ。

「…………」

 これ、帰っちゃ駄目かな? 体調不良とかなんとか言って。

 ……駄目だ。仮病が効く相手がお母さんしか思いつかない。せめて別の言い訳を考えなくては。

「う〜ん……」

 事故……を偽装するにしても人に迷惑だし……なにより痛いから却下。事件も同様。そもそもこのご時世でおっきな事件に巻き込まれる可能性が低すぎる。

 たまたま知り合いと会って時間を忘れておしゃべり……できるような相手が私にいたらお母さんに心配されてない。

 うあぁ〜……。私の乏しい想像力じゃ二パターンしか浮かばないし、両方碌な内容じゃないガバガバ〜……。

 ど、どうにか絞り出せ私ぃ〜!

「う〜ん……」

 いっそ家出……とか?

 数日適当なとこで過ごして、凄いストレスでバックレちゃったって言ったらどうにかならないかな?

 追い詰めちゃってごめんねって大おばあちゃんとかなってくんないかな?

「…………」

 駄目だ。なったとしてもそれはそれとして罰をって言われるか、心配だからしばらく一緒にってなりそう。死ぬ。

 もうこれ……諦めたほうがいいかなぁ〜? 試験に落ちるのだけを希望にしたほうが良いかなぁ〜?

 でもリリンさん曰く、私はほぼほぼ通過しちゃうって言ってたんだよなぁ〜……。

 あ、マナ関連でなく座学で落ちればいいのでは? あんま重要視されてないとはいえ、一応反映はされるはず。

 ……念の為リリンさんに確認してみよっかな。朝だけど起きてるかな?

「えっと……」

 『入試の座学ってどれくらい合否に反映されます?』っと。

 じゃあこれでちょっと待ってみて、来なかったら来なかったで手抜きを――。

「え、はっや……」

 もう返事来た。えっと?

『あんまり関係ない。形だけ』

「…………」

 『ありがとうございます。参考になりました』っと。

 ……関係ないなら手抜きしただろって言われないように真剣にやろ。

 はぁ……結局受けないって選択肢は消えるんだね……ハハ。

 運命に抗えるほど、私は強くなかったみたい。

「……よっし」

 むしろ開き直ってやる。受かったら受かったでそのとき考えて、受からないことを祈って全部やり通そう! 適度に適当に!

「――あわ!?」

 だ、誰!? やる気を出したところで後ろから服を引っ張るのは!?

「あ、あれ? あ、アナタは……」

「…………」

「ま、瞬さん?」

 で、名前あってたっけ?

「…………」

 う、頷いてる……ってことは合ってた。良かった。

 で、え〜っと……。

 な、なんでここに?

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