珍しい光景 ※才視点

「〜♪」

「……!」

 帰ってから機嫌がいいとは思ってたが、鼻歌混じりにゲームするほどだと!?

 リリンの機嫌は良い方にも悪い方にも転ぶことが滅多にないから珍しいにもほどがある。

 しかもなんだそれ。やたらリズミカルというか……奇っ怪な曲は。

「ねぇねぇリリンまっま。それなによ。馴染みがなさすぎるリズムなんだけど。もっとこう……子守唄的なのをリクエストしたいなって思うんだけど?」

 お、普段食っちゃ寝でたまに会話に混ざってはかき回す灰音赤ん坊がちょーど聞きたかったことを――。

「……ぐっ」

 じゃ、ねぇよ。なんだテメェも読心術かこの野郎腹立つな。コロナけしかけてやろうか?

「ん? あぁ、。いかんな。時が近くなり少々浮かれていたやもしれん」

「無意識? 浮かれる? お前が? 大丈夫か? 病気ではないのか? 今夜は一緒に寝てやろうか? 温かいぞ、毛皮」

「自ら毛布扱いとは珍しく自虐をするじゃないかロゥテシア……めんどうだ、もうでいいだろ」

「お、おおう。今更だとも思うが……なんだか嫌にしっくりくる呼び名だな? ん〜?」

 シア……ね。良いんじゃね? それでも俺はロッテを譲らない。良いなって思っても今更変えられない。

「で、結局それなんなん?」

 と、ここでカナラ参戦。聞き耳立ててるなと思ったけどやっぱ気になるよな。

「そんなに気になることかぁ? 貴様ら……」

「ん。なぁそぇ」

 ついにコロナ参戦。超珍しく……というかリリンに後ろから抱きつくとか初めて見たぞ。お前も大丈夫か?

「そんなに聞きたきゃ……そら」

 相変わらず器用に影使いやがるな。

 俺も持つのはできるけどタブレットに反応さすのは無理だぞ。どうやってんだそれ?

 てか……。

「なんだこれ」

「変な趣味してるねマッマ」

「キンキンするな」

「……? …………?」

「ふんふん♪」

 ほぼ困惑する中でお前だけ楽しそうだなコロナ。刺さるもんでもあった?

「で、なによこれ」

「大昔の電波ソングと言われてたヤツだな。面白いだろう?」

「そりゃあ……まぁ」

 そもそも音楽を聴かない身からするとどれ聴いても珍しいとは思うだろうけど、これは一際……特徴的だなとは感じるかなぁ〜?

「まぁなんにしても意外だな。お前が音楽を楽しむのがまずもって」

「そうか? 大体の娯楽は網羅してるつもりだが」

 一応酒と煙草も試したもんな。ついでに葉巻も。お気に召さなかったようだけどさ。

 むしろ葉巻はカナラが気に入ってたし。まぁこいつの場合普段から吸ってたから別に不思議でもなんでもないっていか妥当だわな。

 ロッテとコロナとついでに灰音は揃って鼻塞いでるの可愛かったな特にロッテ。

「あ、そういえば今日カラオケにも行ったんだよな」

 迎えに行った時そう言ってたし。となれば気になるよね?

「それ、歌ったり……?」

「あぁ」

 ギョ! って見ちゃったよね。つか俺以外もギョッとしてるわ。だよな! 驚くよな!

「なんだ貴様らぁ? 我とて二人切りでカラオケに行けば歌いもする。むしろ何のために入るんだ?」

「いやだってリリンの場合ずっと食ってても……なぁ?」

「むしろ我のが歌ってたぞー」

「へ!? 大丈夫!? お腹悪なってない!!?」

「やっぱり今日は一緒に寝よう! ほらもうゲームはやめて寝るんだ!」

「……? ふんふん!」

 カナラとロッテの母性組がめっちゃ心配そう。

 コロナは……わかってねぇな。ノリで引っ張ってら。てか首絞めてら。

 でも気持ちはわかるよ。いっつも暇さえあれば食ってばっかだもんな。

 正直、俺もちょっと心配してる。

 まぁでも、それくらい楽しかった……ってことなんだろ。うん。そう思っておこう。

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