色 ※才視点
「なぁ、おい……大丈夫かこの子? すげぇテンパってるけど」
「ボイチャでもこんなもんだ。なんなら文字のみ時折焦ってるのがわかるぞ。これがまた貴様とはまた違った焦り方で中々に趣深いぞ? クハ」
「性悪め」
まぁでも、こいつがそんなに構うってことはそのくらい興味がそそられる相手……ってことなんだろうな。
わざわざ俺に同行させたくらいだし、不思議でもないけど。
ふむ。でもなにがそんなにそそられ――。
「……?」
この子の眼鏡……変だな。マナを含んでる……いや、この子がマナを供給し続けてるな。レンズの中に空洞……中の空間がちょっと歪んでて視覚情報を制限してるのか?
目になんか……あれ、赤いな。それにやたらマナが集中してるような?
なんか特別な体質なのかな? だからリリンも興味が……いや待てよ。顔合わせ初めてのはずだよな? だったらどこに惹かれて――。
(気になるか?)
「……!」
こいつぅ……またこっちの考えを……。まぁちょうどいい。
(で、なんで?)
(簡潔だな。少しは自分で考えようという意思はないのか)
(ねぇよ。良いからこの子の何が気になって俺を連れてきたか言え)
(フム。もうしばし泳がしても良いと思っているが、キミのヤツもいつ立て直すかわからんし、良いだろう)
その前置きすらいらねぇっての。話すならさっさとしろ。
(こいつとは佐子から色々借り始めてからすぐにゲームで会ってな。気も実力も合うからよく遊んでるんだよ)
(実力って……ゲームのだよな? 昨日そんなことも言ってたし)
(無論)
(へぇ〜)
(お互い唯一の遊び相手みたいなモノだな。キミはお前とはまた違う方向で我と対等。代えがたい存在だよ)
言いたいことはわかる。春頃だとお前と対等な存在って思い当たらないし。ネスさんも稀有さであれば認めるだろうけど如何せんこいつの場合は
(しかし、ただの人畜生が我と対等になれるわけもない)
(まぁ……そうだな)
反応や読みや洞察力だけじゃなくゲームしてる時の指が気持ち悪い動きと可動域してるし。あれに追いつく操作ができてる時点でこの子が只者じゃないってのはわかるよ。
……今目の前にいる子ってのが驚きだけど。
(で、まぁ色々と言い含めて学園祭の時来るように仕向けたんだよ。二回来ていて、一回目は我が仕込んだんだが二回目は夕美斗の妹に捕まったそうだな。お前同様そういうのを引き寄せる星の下にいるのかもしれんなぁ?)
うるせぇ。お陰で今人生満喫できてんだからあたかも悪いみたいに言うんじゃねぇよ。
(なんにせよ、キミから得体の知れないモノは感じていたわけだ。だから直に視てみたんだが中々どうして……クハハ)
(んだよ。今更もったいつけんなって)
(いやなに。思った以上の収穫だった故なぁ。なにせアイツの目は――我らの影と似た代物だから)
「……っ」
お、おいおい。それって……。
(もちろん完全に同一というわけじゃない。あくまで高密度のマナの行く先といったところか。影……いや黒と。夕美斗が垣間見せ、コロナが制御下に置いた白。クレマン・デュアメルも白だな。あとはお前は見たことあるかは知らんがネスの紫。恐らくロゥテシアの毛の色もネスと同様紫のマナの影響だろう。ロゥテシアやキミから初めて感じた時はよくわからなかったが……というかロゥテシアとネスのも同一とつい最近分かったくらいだ。コロナのお陰でな)
(……? なんで急にコロナ?)
(色付きが複数あると分かったのがコロナが強烈な白を使ったからだからだ。正確には違うが……今はいい)
(……そのあたりはいずれ聞くとして。今そのマナの色の話? と、この子の目が同じってことは)
(あぁ。キミの目の色……赤色なのはマナによるモノだ。まだそれぞれの色についてどんな特徴があるかはわからんが……それはこれから明かせば良い。少なくとも黒、白、紫、そして赤が観測されただけでも大きな発見というヤツだ。我はこれからキミを観察して赤のマナについて探りを入れる。もちろん、目的の順位的には一番というわけでもないが)
(え、そのために来たんじゃねぇのかよ。じゃあ主目的は?)
(そんなの決まっているだろう?)
「……?」
(こいつと遊ぶ為だよ)
(……………………さいですか)
とりあえず、こいつが俺を連れてきたのはこの子の特異なマナを近くで感じさせる為なのはわかった。
たぶんこれも、ついでなんだろうけど。
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