オフ会ともなれば名実共に初めての友達と呼べるのではなかろうか! ……と、思ってたけどこれは気後れして然るべき ※乙喜実視点

「……っ。……っ」

 あ〜ドキドキとそわそわが止まらない……!

 待ち合わせ場所は……合ってるね。

 服は……うん。かび臭くない。久々出したヤツだから防虫剤臭かったけど、急いで何度も洗濯した成果が出てる。そもそも流行無意識でダサい気がしないでもないけど、そこはそれ。別にここ大都会ってわけでもないし。そんなの原宿とか渋谷で気にしろってことで。

 っていうかLilinさんも同じ穴のムジナだろうから気にする必要ないでしょ。うん。

 あれでも、男性と暮らしてるらしいから多少は……あ〜気になってきた……! もうちょっと見た目気にしたほうが良いかも!

 どっか鏡……の代わりになりそうなのはチラホラあるけどこんなもっさいのちんちくりんが気にしてたら目立つ。手持ちでなんとか……いいや端末スマホで。パッと見、身だしなみ整えてるようには見えないし。

 今こそホログラムタイプとか眼鏡タイプが苦手で安価な端末タイプを未だに使ってて良かったと思った瞬間。

 んまぁ、前者二つそもそも高いし、ホログラムタイプは便利だけど機密性皆無だから未だに端末タイプの普及率が半分くらい占めてるし時代遅れってほどでもないんだけども。

 さて、まずはっと。

 目ヤニは……なし。

 顔の浮腫むくみは……そもそも丸顔だから気にならないっと。

 眼鏡に汚れはなし。特別製だから唯一気を遣って使用してるだけあるね。デッカい丸眼鏡だからこれは文句なしにダサいからあんまり関係ないけど。

 最後に髪は――おっふ! 春風が! 髪留めが!

「あ、あばばばばばばっ!」

 ど、どこまで飛んでくのぉ!?

「え?」

 今、地面につきそうな瞬間……変な感じが。

 黒い何かが髪留めに触れて弾いたよう……な?

「あ」

 ひ、拾われてしまった。いや、しゃがまずにキャッチしたわけだから拾うというか取ってもらっちゃったのほうが正しいのかな?

 と、とりあえず何が起きたかは、まずはお礼をば。

「す、すみません……あの……それ……――!?」

 うわわわわわわわ!? 金髪美少女!? 肌白い! 髪さらさら! 目おっきい! 鋭い! でも可愛い! ヤバい! 目が幸せ! でも若干大おばあちゃんに雰囲気似てて微妙な気分にもなっちまう! でも可愛い! 超美少女! 私と大違い!

 ハ!? そんな美少女にこんなもっさい女の髪留めなんぞを触らせてしまった!? 罪! 万死! でもまだ死ねない! 今日は大事な人に会うんだから!

 それに、いつまでも持ってもらうわけにもいかない。早く謝って……あ、いやお礼かな? とりあえず回収しなくては。

「あ、す、すみません……それ私ので――」

 あれ? 眼鏡の上からのに読み取れない。この感じ……なんだか……。

「黄身よ。はじめましてと言うべきかな?」

 なんで名前……なんて疑問は一瞬でかっ消えちゃった……。

 話し方とか、雰囲気とか、読めないところとか……これもう完全に。

「Lilinさ……ん?」

「あぁ」

「――」

 う、嘘ォ!?

 背ちっちゃ!? イタい大人だと思ってたのに私よりちょっと小さいかもってくらいちっさ!? 成人しても一四五センチ以下の人もいるって聞いたことあるけど実際目の前にすると……。

 いや、まず大人というのが先入観では? もしかしたらただの厨二病ということも……。あれ? でもお酒飲んでたり、だ、だ、だ、男性とのアレコレもしたことあるって聞いたことあるし……。もし未成年ならつまり悪い男にたぶらかされて……とか? そしてその男の人っていうのが隣で私達の様子をうかがってる方だったりして――。

「………………………………!?」

 ん? ちょっと待って、隣の男の人見たことあるっ。というかLilinさんも服でわかりづらかったけど見たことある!

 最近魔帝と戦って倒した天良寺才さんとその最初の契約者のヒトだ!

 Lilinさんとの会話チャットで度々話題になるから学内試合の動画たくさん見たのがここに来てフラグ回収となるとは……! というかこういうの見越して話題に上げてたのではなかろうか?

 じゃ、じゃあやっぱりLilinさんは大人? そもそもこっち基準で考えちゃいけないかな?

 あ! っていうかまだちゃんと挨拶もしてない!

「ぁ、ぁ、ぁ、ぁあのっ。わ、わだ、わたっし……! へ、へ、へ、へへへへへへ、へ、逸見へんみ乙喜実おつきみって言います! ほ、ほんっ、ほほ、本日は春風吹きすさぶ晴天の中おいでくださって恐縮でござりましゅ!」

 ぅ、うわぁ〜〜〜〜〜〜〜! カミカミッ! 顔あっつい! 絶対真っ赤! 二重に恥っずい!

「別に呼ばれたわけでもないがな」

 そういえばそうですね! お互い約束して出向きましたね!

「というかリアルネームで良いんだな。まぁ、然程変わらんが」

 『黄身』か『乙喜実』ですもんね! 『おつ』しか違いませんもんね! だから黄身――キミのままで良いです!

 あ〜もう! 色々と重なりすぎて頭ん中グチャグチャだぁ〜……。

 その中でも一番の驚きは……。

「なぁ、おい……大丈夫かこの子? すげぇテンパってるけど」

「ボイチャでもこんなもんだ。なんなら文字のみ時折焦ってるのがわかるぞ。これがまた貴様とはまた違った焦り方で中々に趣深いぞ? クハ」

「性悪め」

 キャラ、別に作ってるわけじゃなかったんですね!

 美しさと尊大なしゃべり方からからどこぞのお姫様だったりしますかね!?

 そうでなくてもその見た目とあのキャラまんまの性格なら超気後れします!

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