肉体的接触以外のお願いは初めてかもしれない ※才視点
「――フム。さて」
「……なんだよ」
さっきからブツブツ言いながら誰かとチャットしてたみたいだけど、俺のほう向くってことは学園長絡みとかか?
そういや
「なぁ、春休み暇か?」
「暇だけど」
「なら付き合え。友人から誘われたから今度駅まで送ってくれ」
全然違ったわ。てか、外に知り合いがいることにびっくりだわ。どうやって交友関係広げてんだよ。
「ゲームだよ。
「へ〜」
そいつは凄い。ゲームつっても人間とは別格のリリンレベルの反射神経や読みができるってことだろ? 十分バケモンじゃん。相手は本当に人間か?
あれ、ていうか。
「ん? じゃあオフ会? 二人で?」
「案ずるな。あいつは女だ」
「……いや別に性別などうでも」
こっちの考え読むのは慣れたけど、ほんの一瞬だけほんの〜り浮かびそうになったことまで見破るのやめろ。こうなった今でも心臓に悪い。
「仮に男だとして、別のオフだとしたら……嫌だろう?」
「す、好きにしたら良いんじゃね? なぁ〜コロナ?」
「ん〜? ねぇ〜」
「そもそもその気なんてないだろそいつに。相手にするだけ損だぞ」
仮に本気だとしても別に俺はリリンが誰に抱かれてようが……。ちょっとは気にするけど、曲がりなりにも初体験の相手なわけだし。男の子なら誰だって気にすると……思う。
あと、なによりも相手方の男が大変そう。普通の人間じゃ無理だろ、リリンとなんて。
「クハハ。わかりやすいヤツめ。心配せずともロゥテシアの言う通り、お前以外に触らせるつもりは毛頭ない」
「…………」
なら最初から話題にするんじゃねぇ。と、言ったところで聞くわけねぇわな。
「で、いつよ。でかけんのは」
「三日後」
「わかった。そんとき送りゃ良いんだな」
「あぁ」
まったく。最初からそう言えば良いのに。
……いや、待てよ。
「そもそも俺いるかそれ? お前勝手に外出れんだろ」
「貴様覚え――いや、そうさな。あまり紅緒に負担をかけるのも可哀想だろう? 特に今は忙しくしてるしな」
「お前に気遣いの気持ちがあるとは思わなか……った」
てか、なんでリリンが勝手に学園外に出れるって……あれ? 前にそんなことあったっけ?
ん〜……今の俺が思い出せないってことは……ただの思いこみの線が強いか? あ〜、わからん。
「そう深く考えるな。間違ってはないからなぁ。出ようと思えばいつでも出れる。が、紅緒だけが理由じゃないからお前を連れてくというのもある」
「ん?」
それはつまり俺が行ったほうが良い理由があると。いや、会ったほうが良いってことか?
「あれは中々良いぞ。お前も顔を覚えておけ」
「お、おう」
お前のその不気味な笑みを見ると行きたくねぇ気持ちが湧いてくるんだが……。
つかお前のネット友達なのに俺が会ったほうがいいってのがもうよく意味がわからん。
「会えばわかる。そのうち顔をよく合わせるようにもなるだろうしな」
「……それってつまり」
この時期でよく顔合わせるようになるには……あれしかねぇ……よなぁ?
マジでどんな数奇な運命だよ。
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