星が落ちた夜

すがら

第1話

 刻一刻と闇がこちらに迫ってくる。


 あんなに明るかった青色は紅く染まり、深い深い青色へとなってきた。太陽に照らされて輝いていた海も月の無い夜は真っ黒だ。その代わりに星がよく見える。この自然界において、間違いなく主人公だろう。


 星が落ちた。


 流れ星なんかでは無い。落ち星とでも言うべきだろうか。

 いつか映画で見た光を放つ綺麗な景色でもなく、これがあの美しい星だなんて信じられない姿をしていた。降ってきた星は大きいはずなのに小さくて雨の様だった。そのおかげか、大して景色は変わらなかった。この自然災害が解明されるのはいつだろうと、そんなことを考えながら見上げた空にはひとつも星が無かった。

 月も星もない空。主人公の居なくなった物語。明日になればいつもの月が出てきてくれるだろうけど、細くて頼りない。闇の中に一定間隔で浮かぶ人工的な光が、今日は酷く不自然で不気味だった。


 目がくと朝だった。昨日のことなんて無かったかのように太陽は登り、海は輝き、魚は泳いでいた。星が落ちるなんて、自然界では大したことが無いのかもしれないと思ったが、すかすかの脳みそでも、そんなはずは無いだろうと否定してくる。考えるのも面倒なので、それならこの地球ももうすぐ落ちるだろうと適当に締めくくった。


 雲と魚と通りかかる猫を眺める。

 段々と空は紅く染まっていった。当たり前なその日常に昨日の記憶を疑う。

 人の気配がひとつも無かったという決定的な事実に気付かない振りをして。


 既に深い暗い紺色の空。

 キラキラと輝いていた海も夜は真っ黒である。空の星がいつもより明るかった。月が居ない今日は主人公気取りなのだろう。


 星が落ちた。


 流れ星なんかでは無くて、もっと言葉通りな。落ち星とでも言うべきだろうか。

 いつか何かで見た綺麗な景色でもなく、これがあの美しい星だなんて信じられない姿をしていた。しかし、降ってきた星は大きいはずなのに小さくて雨の様だった。

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星が落ちた夜 すがら @hoshi__yomi

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