第46話

「橘音」

数日ぶりに柴と会った。

嬉しいが、しばらくまた会えなくなること

を考えると、胸か苦しい。

「ごめん、また言えなくて」

「ううん、大丈夫だよ。

私を気にしないで自分の夢を追いかけな」

「橘音、ありがとう」

柴の目が潤んだ。

柴がどうしよもなく眩しく感じた。

眩しすぎて、自分のことが惨めに感じてしまう

ほどだけど、自分を見ないことにした。

だって、少しでも自分の事を見てしまったら

全力で真っ直ぐな柴に向かって行かないでって

叫んでしまいたくなるから。

「実は、ライブツアーが終わっても

ここへは中々戻ってこれないかもしれないんだ」

「じゃあ、憧れの上京ってことだね」

「うん、なんか、寂しいな」

「そうだね」

これ以上、柴に優しくされたくなくて

涙をのんだ。

「ファイト!絶対に諦めんなよ!」

「うん、頑張れそう」

遠のく柴の背中に大きく手を振って

見送った。

また会えますように。

そのくらい願ってしまっても

罰は当たらない、と思う。

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