第45話

柴には、短い期間だが、お世話になったものだ。

毎日楽しい時間をくれたし、柴のおかげで

七菜香と仲よくなったと言っても過言ではない。

恩を仇で返す真似をする人たちをあんなに

酷く冷たい目で見下していたから。

柴を引き止める権利は

自分にはなかった。

「今日くらい、柴はいつもの場所に行ったら会えるかな」

完全に落ち着いた。

柴と気軽にいつもの場所で会えなくても、

あの何気ない楽しい時間は私の気分を和ませる。

「前を向け、私」

柴とああやって話せるのはこれで最後になるかも

しれない。

だったら、最後くらい、笑顔で締めようじゃないか。

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