第38話

柴とは相変わらず頻繁に会えたが、

七菜香とはのんびり話す機会が減っていた。

出版社の人たちが七菜香の作品を

えらく気に入ったようで、ひっきりなしに

仕事の依頼が来ているそうだ。

「七菜香ちゃん、体壊さないようにね」

「大丈夫、ちゃんと気を付けてるから」

「ファイト!」

一昨日そんな会話をしてからずっと会えていない。

「なんだか、寂しいね、七菜香ちゃん

急に手の届かない人になっちゃったみたい」

「そうだね、でも、友達の夢はしっかり応援しないと」

柴の言葉で我に返ったが、あと一歩で七菜香に

醜い嫉妬心を向けてしまいそうになっていた。

柴の言う通りだ、私たちは七菜香の背中を押さないと。

「実はさ、歌い手始めたんだ」

「そうなんだ、私、柴くんのファン第一号になりたい」

「ありがとう、凄い嬉しい」

二人が私を置いて夢に突き進んでる。

応援したいのに、行かないでって言いたい自分がいた。

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